今月のお悩み相談室は
脚本家 / 作家の夏生さえりさんにご回答いただきました。
文化祭の演劇の脚本を書くコツを教えてほしい
ななみ・高3 文化祭の演劇の脚本を書く場合、限られた時間内に原作の内容をどう収めるか、セリフだけで状況をどうお客さんに伝えていくかなど、とても難しそうだなと思うのですが、夏生さんが文化祭の舞台の脚本を書くなら、どんなことに気をつけますか? 書く時のコツを教えてほしいです。
夏生 私が大事にしているのは、最初に“最後に伝わってほしいこと”をゴールとして掲げて、そこに向かって脚本を作っていくことです。だから私は“観客にこんな気持ちになってほしいよね”というのをクラスのみんなですり合わせて合意を取るところから進めると思います。普段の仕事でも同じで、私は共同脚本をすることが多いのですが、チームでしっかりとゴールを決めておくことで、「センスのある人が勝ち」みたいにならず、「このゴールのためにはこっちの意見の方が大事だと思いませんか?」という話し合いができるんです。演劇も尺の都合で原作全部は再現できないと思うので、みんなのお気に入りのシーンはいろいろあると思うのですが、共通のゴールがあれば、泣く泣く削るシーンも諦めやすかったりします。
ゴールの共有は、脚本担当者だけではないんですか?
夏生 クラス全員で共有すると思います。例えば映画であれば脚本だけでなく、照明さんとか、カメラマンさんとか、最後に映像を編集する方など、作品に携わる全員にゴールを共有できていることが大事なんです。みんなが目の前の自分の仕事だけに集中してしまうと、ゴールを見失ってしまうことがあるから。だからこそ、“明日頑張るぞって気持ちになってほしい”とか“最後にみんなを泣かせるぞ”とか“めっちゃ笑ってほしい”とか、みんなで決めたゴールをそこらじゅうに貼って、忘れそうになった時にいつでも見るのがオススメです
私は文章を書くのは好きなのですが、書きたい場面だけ書いて、その前後が書けなくて、物語を完結できないことが多いんです。
夏生 すごくよくわかります。私も書いているうちに迷子になって、白紙に戻すことがよくあります。書き切るのって難しいですよね。だからこそ、最初にテーマだったり、主人公がどういう状態からどういう状態になっていくのかという設計図作りが大切で、一番時間もかけています。これもチームみんなで出来事をすべてポストイットに書いて、展開を貼っていき、“うん、これだね”と全員で納得してから書き始めます。先にシーンを考えず、まずは全体でやりたいことを見据えて、それを描くためにすべてのシーンがあると考えるといいかなと思います。これをよく「土台を固める」と言っています。
家を作る時はまず設計図を作って、骨組みを作って、土台をしっかり固めてから、装飾などの素敵なインテリアを考えますよね。同じように、脚本もセリフのやりとりなど楽しい部分は、最後に飾るインテリア的にとってあるという感じです。
夏生さんが企画・脚本を手掛けられた映画『見えない娘 THE INVISIBLES』について、高校生へのおすすめポイントを聞かせてください。
夏生 今作では “透明人間” という突飛な設定を使いながら、目に見える、見えないに関わらない絆を描きたいなと思いました。高校生は人とのコミュニケーションのうえでも、目に見えるもので悩むことも多いと思います。例えばSNSでこの人がフォローしてくれているかどうかとか、いいねしてくれたかどうかとか。だから、目に見えるものだけが大事なわけじゃないなと思えるきっかけになるかもしれないし、単純に家族や友だちと笑いながら観てもらえる作品だと思います!
エッセイ、書籍、脚本、コピーライティングなど、文章にまつわる活動は多岐に渡る。アニメ映画『超かぐや姫!』共同脚本。最新作は、企画・脚本を手がけた映画『見えない娘 THE INVISIBLES』。
- 『見えない娘 THE INVISIBLES』
- 監督・企画・共同脚本:竹林亮
- 企画・脚本:夏生さえり
- 出演:毎熊克哉、鈴木凜子、近藤華、矢山花、寺島進、余 貴美子、他
- 配給:PARCO CHOCOLATE Inc.
©THE INVISIBLES Production Committee
8/28(金)全国公開



