「社長に会いたい」Chicabi川上鉄太郎|7つの会社を経営する社長が高校時代から続ける「感情記憶」

川上鉄太郎

株式会社Chicabi
川上鉄太郎 社長

デザインコンサルティングの会社を経営しながら牧場経営をするなど、
今注目を集める36歳の川上社長。
驚きのマルチタスクをこなす現在につながる高校時代のエピソードも伺いました!

    ▼ 川上社長が心掛けている3つのこと

  1. 調和

    僕の人生のテーマは「調和」です。これは生きる上でも仕事をする上でも心掛けています。僕はわりと客観的に情報を把握する能力が高いと思っているので、世の中の不調和を見つけて調和していくことが役目かなと思っています。

  2. 優先順位をつける

    僕のカレンダーは日々タスクと打ち合わせで埋まっているので、限られた時間の中でそれらを緊急度と重要度、タスクのコスト(時間やお金)から瞬間瞬間で常に優先順位づけしています。これはマルチタスクでやっていく上で大切なことだと思います。

  3. 人に頼る

    仕事に関して何でも自分でやっちゃうタイプだったのですが、人に頼る大切さを知って、最近は周囲を頼るよう心掛けています。


どんな会社を経営されていますか?

デザインから牧場、地域再生事業まで
7つの会社を経営

まずChicabiは経営コンサルティングからデザイン制作まで行っているデザインコンサルティングの会社。ウェブやグラフィック、イベント・空間のデザインをするところから事業の経営などに関するコンサルティングまで幅広く行っています。

子会社の千葉牧場では、「千葉ウシノヒロバ」という牧場とキャンプ場が一体化した施設を運営して、牛を預かって育てる「預託事業」を行うとともに東京大学大学院農学生命科学研究科と一緒に「100年後の酪農を考える」プロジェクトなども行っています。

他にも千葉県九十九里町の地域再生のため、閉園した保育園を利用してピーナッツバターなど地域の名産品を作る工場「LOCAL FACTORY」を経営したり、「OCEAN TOKYO」のヘアスタイリング商品のブランド「OCEAN TRICO」の経営にも携わっています。

(※千葉ウシノヒロバは2021年日本空間デザイン賞「サステナブル空間賞」を受賞)


複数の会社を経営する理由を教えてください。

“やりたい”と思ったことを
諦めたくないんです

「やりたい」とか「やるべき」だなと思ったことを諦めたくないからですね。“これは社会のためにやるべきだな”と思った時に、諦めたくないんです。いろんなやり方があるとは思うんですが、僕は全部事業にする選択肢を取ってきたという感じです。

川上鉄太郎


川上社長に「ゴール」ってあるんですか?

みんなが幸せになる世界
そのために自分ができることを

正直ひとつのゴールというのはないのですが、みんなが幸せに生きられるといいなと思っています。世界は複雑でそんなに簡単ではないので、どの事業をしたからどう変わるということはない。自分ひとりでとか、会社ひとつで世界を幸せになんて絶対にできないんですよね。だからこそ自分にできることを最大限にやることでしかないと思うし、その先に良い未来があるといいなと思っています。


どんな高校生活を送ってましたか?

文化祭の実行委員では
美術部門のまとめ役

中高男子校で、ずっとサッカー部でした。文化祭に力を入れている学校で、真面目な子も遊んでいる子もスポーツをガチでやっている子も、いろんな個性が文化祭実行委員会に集まって、半年かけて文化祭を作り上げていたんです。僕は実行委員会の美術部門で、デザイナーたちに絵を描いてもらって巨大なステージを作ったりしていました。

完全に生徒の自治の学校だったので、最初に学校から予算を渡されて、会計局長が各部門に予算の分配するところから始まるんですが、僕は美術部門のリーダーとして前年度よりも予算を増やしてもらうためにプレゼンしたり。この頃から、今の仕事と同じようなことをしていましたが、当時今のような将来はまったく考えていなかったですね。


高校時代から今につながっていることはありますか?

「優先順位の付け方」と
「感情記憶」の方法

高校の終わり頃、ついてもらった家庭教師の方にいろんな考え方を教わりました。重要度と緊急度で考える優先順位の付け方もそうだし、記憶の方法とか。記憶には反復記憶(繰り返して覚える)と意味記憶(意味の関連性から覚える)の他に「感情記憶」というものがあるんです。すごく嬉しかったり悲しかったり驚いたりすると一発で覚えるという。

それを利用して、例えば英単語を覚えるのが苦手な人は、覚えた後に、演技でもいいから意識的に拳を上げて「よっしゃー!」と飛び上がって全力で喜んでみると、脳の中で勝手に感情と結びついて、一発で覚えることができたりします。繰り返していくと英単語を覚えることが好きになっちゃうんですよ。さすがに今オフィスで「やったぁ!」とかは言わないですが、心の中ですごく驚いてみたりして、忙しい中でも効率よく記憶を定着させています。

いろんな会社があって、川上社長の頭の中は一体どうなっているんだろうという感じなのですが、同じ1日の中ですべての会社は横並びで考えているんですか? それとも別々で考えているんですか?

両方あります。いろんな会社がありますが、関連している会社もあれば独立している会社もあるので、独立している会社に関してはその会社のことだけを考えて、関連している会社の場合だと相互に影響が出るので、そこはある程度まとまりとして考えて決めています。


他に人と違う学生時代の経験はありますか?

10歳になるとひとりで海外に!?
家族のルールで小4で渡英

僕の家は親がちょっと変わっていて、10歳になるとひとりで海外に行かされるというルールがありました。姉たちはアメリカとカナダに、僕はイギリスに飛ばされて。中3〜高1の時にサッカーをしにまたイギリスに行く機会があったんです。マンチェスターのサッカースクールに入ったんですが、マンチェスターユナイテッドのプロの練習を毎週見に行くことができて。ある日、練習を見ていたら選手たちが僕たちを呼んで、パス回しの練習に混ぜてくれたんです。当時の錚々たる選手たちが。その時に僕はベッカムからパスを受け取ることができて感動しましたね。


大学卒業後にイギリス留学されたのはどうした理由からですか?

大学生活に危機感を感じ
環境を180度変えた

一番人種が多く集まる学校を探して、イギリスのビジネススクールにたどり着きました。ここでは24ヶ国から集まった社会人、30代〜上は60代くらいの方々と一緒にグループを組んで授業に取り組んで。世界の広さを思い知り、一気に価値観が壊されました。

その後Chicabiを立ち上げられたきっかけはあったんですか?

Chicabiでデザインコンサルティング事業を立ち上げる前、当時シリコンバレーなど海外のベンチャーで、短時間デリバリーのサービスが流行り始めていたんです。僕らは、最短90分で花を届けるというサービスを東京でもやってみようということでクリスマスの時期に試してみたんです。するとそれなりに反響があって。

今までなかったサービスを提供して人が喜んでくれるってすごいなと思ったし、デザインの力にも改めて気づきました。それをきっかけにChicabiのデザインコンサルティング事業を立ち上げたのですが、最初は仕事がないので、相方のデザイナーとふたりでずっとデザインやコンサルの未来について、話してましたね(笑)。話せる相手がいるって大切だなと思います。


憧れの人はいますか?

名前の由来にもなった
山岡鉄舟の生き様に学んできた

憧れるということはあまりないんですが、歴史上の人物で「山岡鉄舟」という人には多くを学びました。幼名が鉄太郎といって、僕の名前の由来にもなっているんです。幕末に勝海舟と西郷隆盛の間を取り持って交渉を成立させ、江戸城を無血開城させたことで知られていますが、剣の達人で禅の達人で、書道の達人でもあるんです。権力や名誉には興味がなかったからこそ自由でいられて。その姿勢に憧れたし、達人って3つもなれるんだと思わせてくれた人ですね。


社長の朝ごはん & モーニングルーティン

川上社長

朝ごはんは基本パン派です。理想はトーストと目玉焼きとソーセージにヨーグルトとフルーツ。朝って、起きてから2時間が一番脳が活性化している時間なので、目を覚ますと起き上がるより前にスマホにメモした仕事のTO DOを確認して、目を瞑ったままアイデアを考え始めます。考えるのが好きなので、放っておいたら2時間くらいずっと考えちゃいます。



高校生へメッセージ

今はたくさんチャンスが転がっていて、選択肢がこんなに多かった時代はこれまでなかったと思います。それを「選ばなきゃいけない」ではなく「こんなに選べるんだ、楽しい」というマインドで捉えて欲しいなと思います。もちろん悩むことも迷うことも、自分の嫌いなところもあると思うんですが、自分の中に少しでもある良いところをどう100倍にするか、自分にとって楽しい時間をどれだけもっと楽しくするかに目を向けてみる。

今はネガティブなニュースが多いので、「終身雇用が終わる」ということをネガティブに捉える人もいるし、AIについても「人の仕事が取られてしまう」と捉える人もいます。でも僕はそれ以上にポジティブな面を見て欲しいなと思うんです。

あと、僕は「働く」も「遊ぶ」も「生きる」も同じで、楽しいことだと思っています。縄文時代に狩猟をしていたのは、「仕事だから」行っていたのではなく、生活だからやっていたんですよね。それが近代になって、働くとレジャーの時間・場所を分けるようになった。もちろんそれで良い面もあるけれど、それに惑わされていてはいけないなと思います。僕は仕事が楽しい、というより、生きているのが楽しい、という感じ。

僕にとって会社がたくさんあるのは、みんながいくつも趣味を持っているのと同じなんです。自分の趣味や楽しいなと思う感覚の延長で、こういうことをお金に換えてみたらどうなるかなと考えています。だからこれから社会人になる高校生の皆さんには、「生きるのが楽しいな」という感覚で社会の一員になって欲しいなと思います。


川上鉄太郎Tetsutaro Kawakami
1985年生まれ。麻布高校、慶應義塾大学法学部卒業、英国バーミンガム大学ビジネススクール修士課程修了。帰国後、株式会社野村総合研究所の経営コンサルタントとして、消費財B2C企業中心に経営戦略、マーケティング戦略を担当。現在は株式会社Chicabi、千葉牧場、BRAND AND CONSULTING AGENCY代表取締役社長、OCEAN TRICO COO等を務める。

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