「メメント・モリ」から「カルペ・ディエム」へ|ボーカル・山田将司とギター・菅波栄純が語る20周年イヤーを終えたTHE BACK HORNの強みとは?

4年振りのオリジナルアルバム「カルペ・ディエム」を発売したTHE BACK HORNの山田将司さん(Vo.)と菅波栄純さん(Gt.)にchスタッフがインタビュー。結成20周年を経たTHE BACK HORNの強みとは?もし、高校時代に戻れるとしたらしたいことや高校生へのメッセージなどもお聞きしました!

20周年イヤーを終えて見えてきた自分たちの武器
それを詰め込んだ4年ぶりのオリジナルアルバム

4年振りのオリジナルアルバム「カルペ・ディエム」のテーマはありますか?

菅波 昨年結成20周年を迎えて、今年の2月にその締めくくりとなる日本武道館のライブを終えて。その間は、ベストアルバムやミニアルバムを出したり、インディーズ時代の音源を再録したり、ライブもツアーもいっぱいで、全く休んでいなかったですよ。しかも、自主企画「マニアックヘブン」という普段なかなか披露しない曲を詰め込んだツアーをしたりして。だから、20周年イヤーは200以上あるTHE BACK HORNの曲の中からいろんな曲を演奏し直した期間になりました。その中で、”これが4人で作る楽曲の世界観だな”と思える自分たちの武器が何個か見えてきたんです。それを詰め込んだアルバムをリスタートの意味で作りたい。自分たちの最強の武器を全部集めて、今まで以上のクオリティで僕たちの曲を聞かせたい、というのが今作のテーマです。

「カルペ・ディエム」というタイトルも素敵です。

山田 この言葉はドラムの松田が探してきてくれました。「カルペ・ディエム」の対義語に「メメント・モリ(死を忘るなかれ)」という言葉があります。この2つの言葉の違いは生を思うか死を思うかという視点です。THE BACK HORNに当てはまる言葉は「メメント・モリ」だったのが、今は「カルペ・ディエム」に変わってきたように思います。以前のTHE BACK HORNの曲は人間の闇や個人のモヤモヤした感情を吐露する歌詞が多かった。だけど今はバンドを通じて、今を掴んでいくことが未来を作っていくという実感を持てるようになって、これからもそうありたいと思うようになりましたね。

アルバムの曲順はどのように決めていますか?

山田 毎回、何十パターンも出しながら、全員で考えるけど、ライブと同じようにアルバムを聞いてくれる人の気持ちを誘う曲順になるように意識しています。
菅波 僕たちはロックバンドだから拳を上げたくなる曲が多いですが、ライブでも盛り上がる曲が続くとそろそろ休憩したいな、そろそろ水でも飲みたいなと感じるタイミングがあると思いうし、そこでバラードを入れるようにしたり。
山田 ノリが良い曲が続いているところにバラードを入れることで緩急がつき、聴いている人はぐっと引き込まれる。ずっと勉強ばかりしていても集中力が切れちゃいますよね?それと同じで、必要なところで休みを挟むことが大切なんです。

収録曲はどれも素敵な曲ばかりですが、お二人が特に気に入っている楽曲は?

菅波 「果てなき冒険者」ですね。今回のアルバムを制作するにあたり、はじめにみんなで集まって9曲分のテーマを決て、そのテーマを作曲する3人で、3曲ずつ分担して曲作りを始めました。だけど、将司が「これはテーマには沿ってないけど、すごく良い曲できたから聞いてみて」と4曲目を持ってきてくれて。それを聞いた途端、こんな良い曲どこに隠していたんだ!と一目惚れならぬ一耳惚れをしてしまいました。メロディだけでも素晴らしかったのに、歌詞が乗ることでよりいっそう感情移入しやすくなって。俺も電車に乗っている時に同じことを思う、と共感してしまいました。

「果てなき冒険者」はギターソロもカッコいいですよね!

菅波 そうなんです!ギターソロ、カッコいいですよね!フレーズを考えてくれたのは将司だけど(笑)。でもそれは、ギタリストとしては大きな問題ではないし、弾き手によって音は変わりますからね。とてもいい演奏ができたと思っています。
山田 俺は「心臓が止まるまでは」が好きです。栄純がはじめに持ってきた楽曲で、サウンドアプローチも豊富。4つの楽器だけではない音もたくさん入ってます。シンセサイザーやピアノが加わったことで、曲の始まりがまるで映画のオープニングのようですよね。20周年イヤーを終えた新しいTHE BACK HORNの顔となる曲だけれども、自分たちの根っこにある、しがみついてでも音楽を続けたいという変わらない思いも感じられる曲だと思います。

メンバー全員が曲作りに携るからこそ、バンドの結束が強くなる

THE BACK HORNは全員が演奏だけでなく、作詞や作曲という形でも曲作りに参加されていますね。

菅波 全員が歌詞を書いたりメロディを作ったりするバンドが好きなんです。
山田 そこがTHE BACK HORNの強みでもあるよね。
菅波 誰かがスランプに陥っても、他のメンバーが書けるタフさがカッコいいと思います。俺は初めて自分のお金で買ったのが、ユニコーンのベスト盤というくらい、ユニコーンが好きなんですが、ユニコーンも全員が曲作りに携わり、個性的な曲を作っていて。全員が個性豊かなのに、無理にだれかに合わせたりせずに、バンドとして一つにまとまっていることが奇跡的で。まだ音楽を仕事にしようとは考えてなかったころから、メンバー全員が曲作りに参加するバンドを作りたいと憧れてました。そしてその思いをメンバーに伝えると受け入れたし、みんなに曲を作るセンスやモチベーションがあるからこそ成立する。そんな関係でいられることが嬉しいです。

—20周年イヤーを終えられた今、挑戦したいことがあれば教えてください。

山田 本当は高校生のみんなにカッコいい夢を語れればいいのですが、俺はあんまり展望などを考えないタイプで。まずはアルバムのツアーを成功させたいですね。あまり先のことばかり考えていても、いつどのように気持ちが変わるか分からないし。「カルペ・ディエム」という言葉のように、今の気持ちを実感し、確認しながら生きれば、未来は変わっていくのではと思っています。バンドとしては、これからも4人全員が曲作りに絡んでいくというスタイルを貫きたいですね。作詞も作曲も楽しいこともあるけれど、それだけではなくて。それでも4人で同じ気持ちを共有しているからこそ続けていけるんだと思います。自分で作詞作曲をしてみると、作り手がどういう気持ちでその曲を制作したのかという点にまで意識が向くようになるし、深く感情移入できるようになる部分もあって。メンバーの作った曲に感情移入できれば、バンドの結束力も強まる。その強みをもっと活かしていきたいと思います。

あえて苦手なものにトライすることで人生は面白くなる

もし高校時代に戻ることができるなら何がしたいですか?

菅波 ベースの光舟と同じ話をしたことがあります!でも、高校時代に戻るのはやめようという結論になりました(笑)。今まで味わってきた荒波をもう一度経験するのは…、って。でも、もし本当に戻ったとしたら勉強がしたいです。高校時代に勉強しなかったことを悔いているというわけではないけれど、この歳になって勉強を好きになりまして。学ぶことでどんどん自分の脳みそが変わっていく感覚が楽しいんですよ!高校生の頃の僕は、なぜこんなに楽しいことをしてこなかったんだろう?
山田 高校の時にまわりから言われてする勉強と、自由にできる勉強とでは吸収の仕方が違うのかも。
菅波 確かにそうかも。今は英語の勉強をしているんですが、アルファベットが全部記号に見えてなかなか頭に入ってこなくて。でも、リスニングは得意ですよ!ミュージシャンを20年やってきたので、音として聞いた方が親しみやすいみたいです。最近は、音楽機材を紹介している海外の動画をよく観ています。
山田 俺はスポーツに没頭したいです。運動をすることは大好きで、今でもフルマラソンも走ったりしていて。中学校はバレー部だったんですが、僕の通っていた高校にはバレー部がなくて部活に入らなかったんです。そこから楽器に没頭していったので、スポーツをやっていたらまた違う人生もあったかもしれないですね。自分で言うのも恥ずかしいけれど、運動神経は良い方なので(笑)。

最後に高校生に向けてメッセージをお願いします。

山田 僕は進路を決めるとき、デザインや美術の学校に行くか、音楽の学校に行くか悩んだんですが、人と話すことが好きではない高校生だったので、あえて音楽に進まないと自分がダメになってしまうと思って音楽の道に進みました。美術は一人で完結させることもできるけれど、音楽は人と一緒に演奏するので、必然的に人とコミュニケーションを取ることが多くなると思って。苦手なことにトライすることも大切だと思います。夢がある人はそれに没頭してください。だけど、自分が本当にしたいことがまだ見つからないという人も多いと思います。そんなときは、あえて自分が苦手だと感じている道へ飛び込んでみると面白い人生になるかも知れません。

THE BACK HORN

1998年結成。”KYO-MEI”という言葉をテーマに、聞く人の心をふるわせる音楽を届けていくというバンドの意思を掲げている。2001年シングル『サニー』をメジャーリリース。FUJI ROCK FESTIVALやROCK IN JAPAN FESTIVAL等でのメインステージ出演をはじめ、近年のロックフェスティバルでは欠かせないライブバンドとしての地位を確立。そしてスペインや台湾ロックフェスティバルへの参加を皮切りに10数カ国で作品をリリースし海外にも進出。2018年には結成20周年を迎え、海外公演や日本武道館公演を含む全21公演からなるアニバーサリーツアーを開催し、バンド結成20周年の節目を終えた。2019年も作家住野よるとのコラボレーションなど、その勢いを止めることなく精力的に活動中。

DISC INFO

12th ALBUM「カルペ・ディエム」
初回限定盤A(CD+Blu-ray) ¥6500+TAX
初回限定盤B(CD+DVD) ¥5500+TAX
通常盤(CD) ¥2800+TAX

now on sale

LIVE INFO
THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンツアー」カルペ・ディエム〜今を掴め〜
2019年11月21日(木)浜松窓枠@静岡
2020年1月31日(金)DIAMOND HALL@名古屋

OFFICIAL WEBSITE