『どこよりも遠い場所にいる君へ』 石橋陽彩×永瀬アンナ「高校生特有の繊細な感情の揺れを大切に演じた」

「カフネ」で第22回本屋大賞を受賞した、阿部暁子さんの人気小説「どこよりも遠い場所にいる君へ」が映画化! 離島を舞台に、ある秘密を抱える男子高校生・和希と、1974年からきたという謎の少女・七緒が紡ぐ感動の物語について、声優の石橋陽彩さんと永瀬アンナさんに伺いました!

同い年のふたり
収録ではお互い刺激の連続

まずはこの作品の魅力について聞かせてください。

石橋 映像を観た時は、素晴らしすぎて言葉が出ませんでした。映像も音楽も、皆さんのお芝居も胸を打つものばかりで、たくさんの方に観てもらいたいと思いました。高校生特有の繊細な感情の揺れを僕らは大切に演じさせていただいたので、そこのリアルを感じ取っていただければと思います。

永瀬 まず、没入感が高いなと思いました。島の表現だったり、人々の喧騒の音だったり、物語に奥行きを持たせてくれる描写が多いので、視聴者の方々が主人公と同じ場所に立って、同じ空気を体感できるなと思いました。儚さもありますが、希望もあって私は大好きな作品です。

どこ君

役作りで意識されたことはありますか?

石橋 原作を読んだ時は、和希はクールで心の奥底に何かを抱えているという印象を抱いていたのですが、実際に映像になって、七緒を演じる永瀬さんと掛け合って会話をしていくごとに和希の心が少しずつ開いて表情が明るくなっていく部分も見えてきて、僕の中で和希像もまとまっていったように思います。

永瀬 最初原作を読んだ時は、七緒はミステリアスなイメージを持っていたのですが、映像での七緒を見てみると、表情は豊かだし、言いたいことは言えるし、あくまで現代に迷い込んできたけれども、今をどう生きようかと前向きに考えていて、しっかりと自分のある強い人なんだなと感じたんです。高津さんや和希と出会って生活していくなかで、私の演技も変わっていっています。最後のほうは、和希に遠慮がなくなってお説教はするし、「昭和をなめるな」とか言うし…(笑)。その変化は意識して演じました。

どこ君

石橋さんと永瀬さんは、お互いのキャラクターをどうご覧になっていますか?

石橋 七緒はとにかく一途で、健気で、可愛らしくて、でもそこに強さがあって、和希にないものをたくさん持っている子だなと思います。そんな七緒に呼応するように、和希も自分の思いを言えるようになったり、誰かのために何かをするということができるようになっていったのだと思います。

永瀬 和希は、人一倍繊細な心を持っていて、優しい人だと思います。自分の優先順位が低い人って結構いると思うので、和希の気持ちがわかるという方は多いと思うんです。和希には、立ち入ってほしくないパーソナルスペースみたいなのがきっとあって、七緒がそれをどう捉えていくか、石橋さんのお芝居を聞きながら、考えさせられました。

どこ君

収録時にお互いに刺激を受けた部分ってありましたか?

永瀬 刺激は受けまくりでしたね!

石橋 刺激しかなかったです!

永瀬 私たちは同い年なのですが、同い年の方と全編通して一緒にお芝居をすることってなかなかないんです。お互いにお芝居に対してすごく貪欲なので、どちらかが面白い芝居を仕掛けると、それに乗っかってさらに…みたいなことをずっと繰り返しているような現場でした。

石橋 本当にそうだね。僕のリテイクの場面でも、僕だけで録ればいいのですが、永瀬さんが「その前からやりたいです」と言ってくれて、一緒に流れで録ったり。僕の芝居が変わったことで永瀬さんもグッと変えてきて、それでOKテイクをもらえたり。毎シーン、芝居で刺激をもらっているなと思いました。

永瀬 はい、最高なんです。

石橋 いやいやいや。でも最初の収録の時は、すごい距離が離れていたよね。

永瀬 広いスタジオの端と端にいて。物理的にも離れていたし、心の距離が遠くて(笑)。でも近づきたいなと思ったので、「なんて呼べばいいですか?」みたいな話から始めて。

石橋 そうしたコミュニケーションからスタートしたからこそ、和希と七緒が徐々に仲良くなっていく芝居にも繋がっていったのかなと思います。

和希のように心を閉ざしたり
逃げたくなる気持ちはよくわかる

和希が自分の弱さと向き合うなかで抱える葛藤などは、とても共感する部分が大きかったです。おふたりが高校時代に、自分の思いをうまく言葉にできなかったり、苦しい気持ちを閉ざしたりした経験はありましたか?

石橋 僕はめちゃめちゃあります。別にいじめられていたとかではないんですが、ガヤガヤする教室が苦手で、昼休みなど、ひとりになりたい、取り繕わずにいたいという時には、廊下の突き当たりにあった自販機と廊下の隙間の空間に入り込んで、ひとりで携帯をいじって、ツイッター(X)などを見ていました。高校時代はコロナ禍も重なっていて、中学の友だちが誰もいない環境だったので、思うように自分を出せずにいたところがありました。だから逃げたくなったり心を閉ざしたくなる瞬間は多々あったし、気持ちはすごくわかります。今となってはそれも思い出だし、笑い話ではあるんですけど。

今は変わってきたんですね。

石橋 今もネガティブになる時はあるのですが、お仕事では毎回学びや刺激をいただけるので、ポジティブにしかならなくなってきたという感じかもしれません。うまくお芝居できなくても、今は“できないからこそ頑張ろう”と闘志が燃えるようになったというか。その辺りはすごく変わったなと思います。

永瀬 私も嫌なことや辛いことはあるのですが、自分のポリシーとして、“起こってしまったことは仕方ない”と考えるようにしているんです。どんなにマイナスなことでも、それは事実だから、仕方ないんだと割り切って、寝たら忘れるようにしています。例えば“今日は録り直しをたくさんしたな、悲しいな”と思っていても、寝ることで一旦自分をリセットしています。私も以前は、和希や七緒のようにいろんな人に気を配って思い悩むことが多かったのですが、最近は、とらわれても仕方ないなと思うようになりました。

ありがとうございます! すごく海がきれいな離島が舞台でしたが、おふたりがもしこの采岐島で高校時代を過ごしていたら、どんな毎日を送っていたと思いますか?

石橋 なにげない毎日を大切に過ごしたいなと思います。僕は関東育ちだから島の生活には憧れがあって、例えば七緒と和希がアイスを片手に海沿いを歩いている瞬間すら、今の僕が高校生に戻って行けるなら大切に過ごすだろうなと思いますし、友だちと過ごす時間だったり、人とのコミュニケーションも大事にしたいなと思います。

永瀬 私はきっと“神隠しの入り江”みたいなところに行きたくなっちゃいますね。ボーッと美しい海の水平線を眺めてみたり、時間が流れているようで流れていないような体験をしてみたいなと思います。

今月の特集
「高校の文化祭の思い出は?」

石橋 僕のクラスは出し物とかは特になくて、ダンス部や軽音楽部の発表を、フランクフルトとか食べながら見ていたのですが、そうした非日常的な時間が楽しかった思い出です。クラスメイトとふたりで『点描の唄』(Mrs. GREEN APPLE)を歌おうということになって、ステージ出演のオーディションを受けました。お互いのスケジュールが合わなくなって実現しなかったのですが、楽しかったなぁ。あの青春はもう戻ってこないので、皆さんも思い切り楽しんでください!

永瀬 私は女の子何人かで集まって、ダンスの発表をしたんです。普段あまりやらない洋楽の曲で、イスを使って踊ってみたりして。当日はもちろんなのですが、私は準備している時間が好きで。放課後に「これどうしたらいいかな」とか「衣装はどれがいいかな」とか話している時間がすごく楽しかったし、今も記憶に残っていて、青春だったなと思います。

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『どこよりも遠い場所にいる君へ』
  • 原作:阿部暁子「どこよりも遠い場所にいる君へ」(集英社オレンジ文庫)
  • 監督:和田純一
  • 声の出演:石橋陽彩、永瀬アンナ、土屋神葉、上坂すみれ、羽多野渉、岡本信彦、松岡禎丞/藤木直人(友情出演)/玉木宏
  • 配給:松竹

©阿部暁子/集英社・『どこよりも遠い場所にいる君へ』製作委員会

10/9(金)全国公開