「社長に会いたい」株式会社ダスキン山村輝治社長|驚きのコラボで快進撃を続けるミスドの想い

株式会社ダスキン
山村輝治 社長

今月号の「社長に会いたい」はダスキンの社長に直撃! 現在はWITTAMER(ヴィタメール)と組んだ「misdo meets」シリーズや菅田将暉さん主演ドラマ「ミステリと言う勿れ」とのコラボなど話題が続くミスタードーナツ商品の秘密も聞いちゃいました!

    ▼ 山村社長が心掛けている3つのこと

  1. 社会のお役に立てるか

    やはり会社なので、社会のお役に立てない会社・仕事だとお客様には受け入れられないし、喜ばれないと思っています。

  2. 今の現実をよく見る

    私自身さまざまな経験をして今日がありますが、それはすべて過去の経験なんです。だから今の現実・現場・現物がどうなっているかをよく見て、次に何をするかを考えるようにしています。

  3. チャレンジ精神

    学生の頃は、皆さん興味が多くてさまざまなことに挑戦するんですが、大人になるにつれチャレンジしなくなってしまいます。実は私は今まで失敗をしたことがありません。「失敗だと思ったことがない」と言った方が正しいかな。上手くいかないことはたくさんありますが、上手くいかなかった経験を元に次に違う方法を考えれば失敗にはならないはずです。


まずは、どんな会社か教えてください!

清掃・衛生関連部門とフード部門の二軸で
世界にもフランチャイズ展開

1963年に創業して今年で59年目になります。創業当時、水を固く絞ったぞうきんで掃除をするのはとても大変な作業だったのですが、水を使わず楽に掃除できるようにと化学ぞうきんを開発しました。

現在は大きく分けて、衛生・清掃関連を中心とした訪販部門と、皆さんがよくご存知のミスタードーナツを中心としたフード部門のふたつの部門でフランチャイズ運営をしています。

モップやマット、空気清浄機などの衛生関連商品に加えて、エアコンや家の掃除を代行する業務などお掃除関連のお店が全国で約2800ヵ所、ミスタードーナツは全国に約1000店ほどあり、海外でもアジアを中心にお掃除関連のお店は約25ヵ所、ミスタードーナツは約9000店あります。

ダスキン


ミスドのコラボは毎回ワクワク。コラボ相手はどうやって決めるの?

商品の価値を高め合える
最高水準の企業と手を組む

「misdo meets」は’17年に始めました。それまで約20年ほど毎月100円セールというのをやっていたのですが、それではお客様は “安いから”来てくださるのではないかと考えるようになり、商品の価値を高めていこうとしたのが始まりです。

共同開発先企業の選定は商品開発の担当に任せていますが、最高に美味しくてお客様にワクワクしてもらえる商品を開発するには、最高水準の企業と組みたいと考え、お客様にもアンケートを取りながら、注目を集めている話題の商品や企業に直接アプローチしています。

この5年間で共同開発した企業は14社、年末のポケモンキャラクターの登場は4年連続になります。共同開発しても評判が良くなかったら継続が難しくなります。また、ひとつの商品で幅広い世代が同じようには楽しむことは難しいので、年間を通して、全世代にどこかの期間で興味を持ってもらえるように開発をしています。

山村輝治

ハイブランドとのコラボ商品は難しい?

価格とせめぎ合いながら
納得できる美味しさを求めている

共同開発を受けていただける背景には、この共同開発商品が販売され広まることでお互いの会社・ブランドの顧客層とは異なるお客様にも知ってもらうことができ、売り上げにつながるというメリットがあることが大前提なので、味については相手先の企業やパティシエにも監修してもらい、「これならうちの名前を出しても良いですよ」と言ってもらえるレベルまでこだわっています。商品化にあたっては、実は1年くらい前から企画して準備しているんです。


一番思い入れのあるコラボ商品はありますか?

misdo meets初の取り組み
祇園辻利とのコラボは思い出

やはり‘17年にmisdo meetsで一番最初に出した祇園辻利さんとの商品は、実際に始めてみないとどうなるかわからないところもあり、とても印象に残っています。また、商品を世の中に出した時に、お客様から「ちょっと違う」と言われたこともありました。特にポケモンの商品は「目の位置が違う」「変顔のポケモンが出た」とネットで話題になってしまいました。すぐに目の位置がズレない作り方をするように改善しましたが、ミスタードーナツで並んでいる商品はほとんどが各店舗でその日の朝から手作業で作っているので、多少のズレが出てしまうこともあり、その時は難しさを感じましたね。


▲現在発売中の「misdo meets WITTAMER ヴィタメールコレクション」。ミスドのコラボには毎回注目が集まります。(※販売終了している場合があります)


社長はどんな高校生でしたか?

卓球の強豪高校で
364日練習に打ち込む日々

卓球の強豪校で朝から晩まで年間364日、大晦日以外は卓球の練習に打ち込むという部活中心の高校生活でした。昼休みも筋トレするくらい卓球一筋で…2年生の時に大阪府の大会で準優勝、3年生で団体戦全国大会ベスト8に入賞したのですが、先輩たちは全国大会で優勝していたので、これでも怒られましたね。恋愛なんてまったくなく…今思えば青春を取り戻したいですね(笑)。途中で肩を壊してしまったこともあり、高校の卓球指導者になりたいと思うようになって大阪で体育大学に進学して、教師になる勉強を始めました。


大学時代にミスドでバイトしていた頃のエピソードはありますか?

お客様から言われた一言が
商品価値について考えるきっかけに

親からは自分で学費を出すことを条件に大学に行かせてもらったんです。だから大学時代は授業が終わって夜まで卓球をして、夜中にミスタードーナツでアルバイトをしていました。当時は24時間営業だったので、大学を卒業するまで4年間、2日に1回、22時から翌朝7時まで働いて。

その時、毎週土曜の夜中2〜3時頃に来て、毎回ドーナツ1つとコーヒー1杯を注文される、怖そうなお客様がいらっしゃいました。ある時その方に「兄ちゃん、あの電球はいくらや?」「トイレにあるタオルはいくらや?」と聞かれました。「世の中の商品にはすべて値段が付いている。その値段には商品そのものだけじゃなく、そこにかかわることも全部含まれてるんや。お客さんが払うお金の価値は、商品はせいぜい半分くらいで、半分以上はそれ以外にある。だから店が汚れていたら価値も下がって商品が泣くわ」と言われました。

それっきり翌週からいらっしゃらなくなったのですが、私にとっては初めて商品の価値について考えさせられるきっかけになりました。



卓球コーチからダスキンに入社した経緯は?

ダスキンの女子卓球チームの
コーチとして入社

大学を卒業して一度小学校の教師になったのですが、高校時代の恩師に「もし卓球の指導者になれるチャンスがあれば教えてください」とお願いしていたら、「ダスキンが女子卓球部を作るらしい」と連絡をくださって、話を聞きに行ったのがダスキンとの関わりの始まりです。最初は卓球チームのコーチとして入社したので、仕事内容やダスキンがミスタードーナツを経営していたなんてことも知りませんでした。


入社して営業部署に配属された時、どう意識を切り替えたのですか?

仕事に対する苦手意識が消えたのも
お客様からの言葉

学校の先生をしていた時は、あまり頭を下げる機会がなかったので、まずお客様に頭を下げるところから始まるダスキンの営業には苦手意識が強く、1年間ほどは成果が上がりませんでした。ある時、お客様から「この仕事面白くないんでしょ? 顔に出てる、嫌や嫌やって」と言われました。自分で顔に出しているつもりはなかったので驚きながらも「でもあなたが一生懸命来るから契約してあげるわ」と言われた時に、ミスタードーナツでのアルバイト時代の商品の価値の話を思い出したんです。

それまで訪問販売でお客様に断られると、まるで私のことを断られているようで辛かったのですが、契約を取れないのは私のことが嫌いなのではなく、商品・サービスが必要なかったのだからしかたがない、契約が取れたのは自分の成果だと考えるようになってから、前向きに考えられるようになりました。それが仕事に対する転機でしたね。



“働く”ということをどう捉えていますか?

働くことは生きがい。
アルバイトも社長も仕事の価値に違いはない

生きがいですね。私たちは自分の意志で生まれてきたのではなく、世の中のお役に立つために誕生したと思っています。人に迷惑をかけないということを両親に教わりましたし、社会人として働くことは、仕事を通じて少しでも世の中のお役に立つよう貢献していくことが一番の意味ではないかなと思っています。私はアルバイトの仕事も社長の仕事も同じ価値があると思っています。異なるのは責任を取る範囲と重さだけです。ミスタードーナツの店主が責任を取るのはその店内で起こったことに関してですが、社長の私はグループ全体、すべての責任を取らなければならない、という違いだけで、仕事の価値や尊さにまったく違いはないと思います。


社長になって変化した価値観はありますか?

気に掛ける範囲が広がった
今はたすきをつなぐことが任務

入社した頃は自分のことだけ考えていればよかったけれど、役職が上がるほど社員のことを考えなければならないし、社長の立場になるとフランチャイズ加盟店のオーナーさんやそこで働いている社員、その家族が毎日生活できるようにすることを考える必要があります。そのためには会社が利益を上げて成長していくことも大切ですが、会社を存続させていくことも大切です。社会的に健全な会社が継続していくことは、それだけで大きな社会貢献にもつながります。私は6代目の社長ですが、例えるなら駅伝のたすきを持って走っているところです。もちろん区間賞を取れるに越したことはないけれど、次の人にこのたすきを渡すことが一番重要だと思っています。


社長の朝ごはん & モーニングルーティン

山村社長

健康には気を遣っていて、毎朝100%玄米ごはんとお味噌汁と納豆を食べています。家族からは「健康オタク」と呼ばれていますが、自分では「健康マイスター」だと言っています(笑)。仕事がある日は朝5時に起床して電車で通勤し、本社ビルの9階フロアまで階段で歩いて登ります。9時始業ですが7時には出勤して、20分ほどストレッチやスクワット、腹筋など自主トレをした後、新聞やメールを読みます。夜は基本残業せずに帰って、23時には寝ます。休日は6時から7時の間に起きて1時間ジョギングしてから家族と過ごすという習慣を30年ほど続けています。



山村社長の好きな
ミスタードーナツ商品BEST3!


1位 エビグラタンパイ
2位 もっちりフルーツスティック シナモン
3位 ポン・デ・リング

山村社長

実は甘いものが苦手で…日頃ドーナツ以外のスイーツはほとんど食べません(笑)店舗に行った時は、この3つのうちのどれかを食べることが多いですね。



高校生へメッセージ

まずは、多くの友人、親友を作ってください。そして、嫌いなものから逃げずに頑張ってください。例えば古文は将来何の役に立つんだ思うこともあると思いますが、“頑張ること”が将来に活きてきます。今私が頑張れる源は、高校時代に364日卓球の練習をしていたからです。あの時以上に頑張らなければいけないことは社会に出てからなかなかありません。悩んだり苦しいことがあっても、すべて時間が解決してくれます。会社で苦手な上司と仕事をする時もあると思いますが、いつか上司が異動するか自分が異動するので、少しの間の我慢です(笑)。最後に、ライバルは自分です。他人と比較されることもありますが、やはり一人ひとり個性があるので、去年の自分より少しでも成長できているか、自分を物差しに考えていくことが大切です。優秀な経営者は世の中にたくさんいらっしゃいますが、結局“自分は自分”なので、私も過去の自分に負けないように成長できたらいいなと思っています。


山村輝治Teruji Yamamura
1957年、大阪府出身。中学時代より卓球に打ち込み、’79年、大阪体育大学を卒業後、小学校教諭を経て、’82年、女子卓球部のコーチとしてダスキンに入社。2004年6月より取締役クリーンサービス事業本部副本部長、’07年、取締役ケアサービス事業本部/ホームインステッド事業部(現ライフケア事業部)/レントオール事業部担当、’09年より代表取締役社長に就任し、現在に至る。ミスタードーナツでは全国をまわってのファンミーティングや積極的なコラボ展開にも力を入れ、ブランドイメージ向上に成功している。