映画『ゴジラ-1.0』大阪舞台挨拶|神木隆之介「大きなプレッシャーと不安で公開前日は眠れなかった」

ゴジラ70周年記念作品であり、日本で製作された実写版ゴジラの30作品目となる映画『ゴジラ-1.0』が11月3日(金・祝)の “ゴジラの日” に公開された。公開2日後となる11月5日(日)TOHOシネマズ梅田で行われた舞台挨拶に本作の主演を務める神木隆之介が登壇し撮影の裏話などをたっぷり語ってくれた。

謎や考察の余地があるからこそ
それぞれの楽しみ方があると思う

岸田 『ゴジラ-1.0』の企画・プロデュースを担当いたしました大阪府茨木市出身の岸田一晃です。本日は司会進行をさせていただきます。よろしくお願いします。戦争から帰還し、荒廃した日本で大石典子(浜辺美波)と出会う敷島浩一役を演じられました神木隆之介さんです。

神木 敷島浩一役を演じさせていただきました神木隆之介です。今日は皆さま大事な野球(日本シリーズ第7戦)を犠牲にしてまでここにいてくださってありがとうございます。皆さん、早く家に帰って野球を見たいという気持ちもあるかもしれませんが大丈夫ですか? (会場から拍手が起こる)短い時間ではありますけど、どうぞよろしくお願いします。

岸田 僕も関西出身なので、昨日の試合を観て今日お客さん来てくれるかなと思っていました。

神木 泣いても笑っても今日で優勝が決まるっていう。もうここ(スクリーン)で中継を流して欲しいくらいの気持ちです(笑)

岸田 神木さん、見てください! 会場に「ゴジラ3回目です」と書いてくださっている方がいらっしゃいます。

神木 嬉しいです。ありがとうございます。本当に嬉しいです。

岸田 映画が公開されてまだ3日目ですよ。

神木 1日1ゴジラみたいなもんですよ。

岸田 映画が公開されて3日経ちましたけど、心境はいかがですか? 周りの方々からご連絡はありましたか?

神木 11月3日に映画が公開されましたが、それまでは正直本当に不安でした。長きに渡って皆さんに愛されている『ゴジラ』という大きな作品に携わり、その主役を演らせてもらうということは、僕にとってすごくプレッシャーであり公開が近づくにつれてそのプレッシャーがどんどん増していって、公開日の前日は本当に寝れなかったです。でも、公開当日はお客さん方の熱量がすごくて、ちょっと安心しました。今でもちょっと不安ですけど、今日も映画上映後に皆さまが拍手を贈ってくださっているのを聞いていてめちゃくちゃ安心しました。僕の友だちからも「観に行ったよ」「観に行くよ」という声があって。公開初日には大東駿介くんから「めちゃくちゃ良かった」という連絡をいただきました。続いて間髪入れず、ムロツヨシさんから(ムロさんを真似た話し方で)「これから観に行くよ」と連絡をいただきました。文字だけなんで、僕の想像ですけどね(笑)。映画を観た後に「本当に面白かった」「本当に素敵な作品だった」という声をいただけたので、僕の中で大きかった不安が、ちょっとずつ溶かされていってる感じです。

岸田 公開してからX(旧Twitter)でも、いろんな人たちが『ゴジラ-1.0』の感想をあげてくださっていて、僕たちも本当にそれが励みになってるというか。(山崎)監督なんてずっとエゴサしてますからね(笑)

神木 してましたね(笑)。公開初日に「もう、お腹痛い」って言ってましたからね。映画公開日の少し前に『ゴジラ-1.0』のプレミア公開があって、監督は観てくださったお客さんがネタバレに注意しながら書いてくださった感想を寝ないでずっとエゴサしてて、初日舞台挨拶に遅刻しそうだったと言っていました。監督は、嬉しい意見で “はぁ~、良かった” となって、ちょっと辛辣な意見だと “あぁ(↓)” となると言っていました。でも、歴代の『ゴジラ』も謎が多い部分や考察の余地があるからこそ人それぞれの見方や価値観とか考え方、思想があって長年愛されていて、今でも、そして今後もたぶん繋がれていく作品なんだろうなとすごく思いました。

岸田 ところで、『ゴジラ-1.0』は映画公開前にプロデューサーから情報統制を敷かせていただいていて…。

神木 そう! かわいそうな人たちがいっぱいいましたよ。山田裕貴(水島四郎役)に限ってはですよ…知ってます? 初めて取材で一緒になった時「やっと『ゴジラ-1.0』の宣伝で一緒になれたね」って話してたら、
スタッフ「山田さん、水島っていう情報だけしか喋っちゃいけません」
山田「俺どうしたらいいの? 何を喋ったらいいの? 船もダメなんですか?」
スタッフ「船はあんまりちょっと。船で海に出たぐらいしか」
山田「じゃあ、ゴジラが出てきたってところは?」
スタッフ「具体的には言えないんですよ」
山田「じゃあ、僕ら何を喋ったらいいんですか?」
というような情報統制がありましたからね(笑)

岸田 山田君は「水島です! ゴジラが出ます!」ってずっと言い続けていそう。

神木 彼はそれだけしか言えなかったですね。僕もある程度、制限があったんですが、浜辺は「あきこ」を言っちゃダメで、浜辺は「なんであきこを言っちゃいけなかったのか、いまだにわかってないですけどね」とは言っていました。僕と典子にとって「あきこ」という存在が二人の関係や物語に大きく左右されたり影響されたりするので、それを喋れないとなるとどうやって(物語について)話そうかと全員迷っていました。

岸田 大変申し訳ございません!

神木 いえ、とんでもないです。でも、今は映画公開後なのでもう話しても大丈夫ですからね。

岸田 では、せっかくなので、このシーンは実はこうして撮ったというエピソードはありますか?

神木 あるシーンの撮影時にあきこさんが直前までご機嫌が斜めでした。頑張って頑張って時間をかけて、 スタッフさんも助監督さんもめちゃくちゃ手伝ってくれて、おもちゃとか色々出して遊んでいて。(あきこが)笑ってきたところでカメラを回し始めて、(スタッフの方から)「“よーい” を言えないので、“はい” と言ったら演技を始めてください」と言われて、僕は “はい” の声がかかるまであきこと遊んでいて、自然な流れで聞こえるかどうかわからないくらいの声量で急に “はい” って声がかかるんですよ。それを聞いて僕はとっさに芝居をしていました。めちゃくちゃ大変でしたよ。

岸田 その切り替え力、素晴らしいですね。

神木 あのようなシーンだと、普段の撮影では(スタッフさんが)めちゃくちゃデカい声で「はい!」って言ってくれたりとか、物音を立ててくれたりするんですよ。物音が立つと緊張感が生まれるんです。音って雰囲気というか流れを変える効果があるので、ちょっとピクってなったりとか、驚きを利用しつつパッと(気持ちを)切り替えられるんですけど、小声の「はい」からの演技はめちゃくちゃ難しかったです。

岸田 でも、さすがじゃないですか!

神木 そこは監督がうまく現場を回してくれましたし、助監督さんもめちゃくちゃ手伝ってくれたので、もう結晶だと思います。

岸田 映画公開初日の舞台挨拶では神木さんが「実際に海に出ているのにVFXだと思われる」とお話されていましたね。

神木 銀座の街もゴジラが出て来る時の水しぶきとかもめちゃくちゃリアルでVFXの効果がすごかったじゃないですか。(ゴジラの登場シーンは合成用に)緑色の空間の中で撮影されて、「この100メートル先ぐらいにゴジラがいるので、キャストの皆さん奥行きを大事にしてください」とか言われながら芝居をしてたんですけど、完成されたものを観ると映像がすごかったわけですよ。映像がすごかったからこそ、一部の界隈では船のシーンはスタジオで、波は全部CGじゃないか、VFXじゃないかと言われているんですけど、海のシーンは実際に浜松に10日間行って本当に海と戦って命からがら撮ってきました。(会場から大きな拍手)

岸田 今回のゴジラで象徴的な、ゴジラに船が追われるシーンは敷島さんたちが乗っている船とは別に、その船を追いかける船を走らせて、それをゴジラに見立ててトップスピードで船で走った状態で皆さんに演技してもらって。

神木 本当に命からがらでした。今おっしゃられた通りトップスピードで走ってる。もう足が半分海に出てるんですよ。海がめちゃくちゃ怖かったです。 監督たちから「どうか海に落ちないでください」と言われたんですが、船に捕まるところがないので、フラッとなったらすぐに(傍にいる人を)掴んで支え合うような形で撮影していました。あの船は撮影用に作られたんですよね?

岸田 改造して木造船を作ってます。

神木 だからボロいんですよ。監督が言うには上に高いんです。高い=波に揺れると振り幅がすごくなるんです。めちゃくちゃ怖かったですよ。波が指にまで来てましたからね。“転覆するんじゃないかな。大丈夫かな。俺ら生きてほんとに帰ってこれるのだろうか” って思いながら演ってました。そこだけは皆さん、VFXではないのでご承知おきお願いいたします。そして、撮影は安全にさせていただきました。

来場者から神木さんへ
質問タイム!

岸田 ここからはティーチインの時間にしたいと思います。神木さんに質問をしてみたい方、手を挙げていただけますか?(会場からたくさんの手が挙がる)

素敵な作品をありがとうございます。(あるシーンで)神木さんの叫ぶ姿が印象的でした。監督から何かディレクションがあったり、神木さんが考えて演じられたところがあったりしましたか?

神木 監督からは動きについて特に詳しい指示はなくて、立ち位置についてだけでした。「ここに立って絶望やら憎しみやら怒りやら悲しさやらを含めた感じで芝居をしてください」と指示されて、跪くのはリハーサルで僕自身が演りました。(あのシーンを演じるのは)難しかったですね。当たり前にあったものが全部なくなることは、僕は経験したことがないので最大に想像した限りです。これは現実なのか? という思いが徐々に実感が湧いてきて、言葉にできない入り交じった感情を叫ぶところは自分がゴジラになったかのような叫び声ができたらいいなと。ただの叫びではなくて、ゴジラが怒ったり、そういう感情を持ったりしたら、どうやって叫ぶんだろうというのを想像しながら演じました。黒い雨が降るシーンは、本当に黒くて真っ黒になりました。ちなみにそのシーンの撮影日は5月19日で僕の誕生日だったんですけど、黒い姿のままお祝いしてもらいました(笑)

歴史の長いゴジラの作品を演じるにあたって、かなりのプレッシャーがあったと思います。過去作品をどのくらい観られたのか、またそのプレッシャーをどのようにして乗り越えられたのか教えていただきたいです。

神木 資料を全部いただいて最初の作品からゴジラ単体で出てくる作品をいくつか観させていただきました。でも、観た結果何かを参考にしたということはなかったです。各作品の中でのゴジラのあり方は各作品違いましたし、登場人物それぞれの生い立ちが違って、価値観や考え方があって、その人たちがゴジラにどう立ち向かうかという話だったりもするので。敷島浩一という人間がゴジラにどういう立ち向かい方をするのかというのは、過去作品を参考になぞるのは何か違うのかなと思いましたし、敷島だったらこういう風に立ち向かうというのを表現したかったので。ただゴジラは、ある種都市伝説かのような魅力もすごくあるので、ここまで長年愛されてきたんだなということは改めて思いました。僕から岸田さんに1問だけ質問していいですか? 『シン・ゴジラ』から7年経って『ゴジラ-0.1』を企画して制作するまではどのような感じでしたか?

岸田 めちゃくちゃプレッシャーがありました。「できんのか?」「面白いものを作れるのか?」と社内外のいろんな人から言われました。僕は山崎監督と『アルキメデスの大戦』(’09)でご一緒させていただいた経緯もあって、うちの上司から『ゴジラ』はどうですか? という話が出ていて、 監督と何度か打ち合わせさせていただいた時に「戦後にゴジラ」と監督がパッと言われた時に “いける” と思いました。今までにない設定でしたし、山崎貴監督ならそこで魅力的に描けると思ったので、「監督やりましょう」と言って。

神木 さすが世界のタカシヤマザキ! 皆さん、何かつぶやく時は「#世界のタカシヤマザキ」で(笑)

最後に神木さんから皆さんに一言ご挨拶をお願いします。

神木 改めまして、大事な日に足を運んでいただき本当にありがとうございます。情報が解禁されたので、普段話せないようなことや、これまで話してこなかったようなことを話すことができて嬉しかったですし、実際に皆さまのお声や質問を聞くことができてすごく楽しかったです。今日は本当にありがとうございます。

『ゴジラ-1.0』で監督・脚本・VFXを手掛けられた山崎監督のインタビューもあわせてお楽しみください!

読者プレゼント

『ゴジラ-1.0』
  • 監督・脚本・VFX:山崎 貴
  • 出演:神木隆之介 浜辺美波
    山田裕貴 青木崇高
    吉岡秀隆 安藤サクラ 佐々木蔵之介
  • 配給:東宝

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