社長に会いたい|れもんらいふ 千原徹也「個性は自分で作るものじゃない。ライフスタイルすべて」

株式会社れもんらいふ 千原徹也 社長

あの広告もCDジャケットも、ドラマのポスターもれもんらいふが手掛けているの…!?
世の中に日々生み出されるデザインの中でも印象に残る作品、その仕掛け人はどんな人なのか? 千原徹也さんに伺いました。

 

まずはどんな会社か教えてください!

千原徹也がアートディレクターを
務める、デザイン会社

れもんらいふは僕がアートディレクターで、僕が考えたものを一緒にデザインしてもらうデザイナーが数名いるデザイン事務所です。アートディレクターというのは、広告やポスター、CDジャケット、商品のパッケージなどをデザインする時の監督のような仕事です。だから例えば広告であれば、タレントは誰を起用して、ヘアメイクやスタイリストを誰にして、カメラマンを誰にして…ということを決めて、みんなに動いてもらっています。

 

デザイナーのお仕事に大切なことって何ですか?

自分のデザインを
人に説得できる言語化能力

デザインって世の中に溢れすぎていて、重要視されにくいんです。センスとか好みの問題もあるから理解してもらうのが難しいんですよね。だからこそ、言語化能力はとても大切です。いかに人を説得できる言葉を持てるかどうか。デザインは会社に入ればできるようになるし、今の子ってインスタグラムとかやってるから、絵作りのセンスはみんな持っているんです。僕はそれがデザインをやる上で一番大切だと思っています。

デザイナーさんにも言葉が大事なんですね

だから僕は採用の時には文章を書ける人を選びます。若い子には「ツイッターやってる?」とか「note書いてる?」とか聞くんですけど、大抵やってない(笑)。でもツイッターって、社会に対する疑問を持っていたり、短い文章の中で起承転結を入れられる力、人を説得するパワーがないと書けないですよね。そうした世の中に対する主張を文章で表せる人が、やっぱり生き残っていくと思います。そのためには体力も使うし脳みそも使うし、時間も使う。すると時間の使い方も上手くなって、頭の使い方が上手い人になっていくんです。文章を書くという中にはすべてが詰まっています。だから本を読むことも大事。それは、自分がやりたいことを主張できるパワーを持てるということなんです。

なるほど…。

例えばCDジャケットやドラマのポスターの仕事って、花形だと思いますよね? でも新発売されるチョコレートの広告案件を受けると予算は何千万円、一方でCDジャケットやポスターって何十万。桁が2桁くらい違うんです。それは、CDジャケットやドラマのポスターは、すでに世界観があって言語化されていて、何を作ればいいか割と明確だから。僕が説得する必要がないんです。でも新しいチョコレートを売り出す広告を考える場合は、どんな人に売るのか、テレビCMは打つのか、TikTokだけで出すのかなどいろんなことを考える必要がある。それをチョコレートのことをずっと考えている企業の人に対して、それ以上に面白いことを考えて提案して、説得しなければいけない。だから、絵だけじゃない、相手を納得させられる文章のコミュニケーションが大事。そこが金額の違いになってきます。もちろんCDジャケットのお仕事とか、刺激的だし面白いんだけど、お金のことだけで言うとそういう違いがあります。

 

デザインする時にはまず何を考えますか?

表面的なことだけでなく
“人の視点を変える” のがデザイン

僕は俯瞰で物を見る力が人生で一番大事だと思っています。例えば日向坂46のジャケットのデザイン依頼が来た時に、固定概念で日向坂46のジャケットのデザインをしようって思っちゃう自分がいるんです。でもそれだと日向坂46のジャケットの概念を越えられない。そもそもCDジャケットって今必要なのか、この曲にとっては何が大事なのか、彼女たちの1年後、2年後には何が大事なのかとか、まずそういうことを考えます。すると新しい概念のCDジャケットが生まれます。

デザインって表面だけのことではないんですね。

僕もデザインって表面的なものを呼ぶのかなと思っていたんですが、コミュニケーションを作ることもデザインだし、考え方を構築するのもデザインだと思うようになりました。だからデザインは “人の視点を変えるもの” かなと思います。例えばカップヌードルってこういうパッケージだよねって概念があったけど、デザインがまったく変われば、カップヌードルってこんな考え方もあるんだって思いますよね。そういう視点を変えられるものがデザインだなと思います。

 

「お仕事との向き合い方」について千原さんの考えを聞かせてください。

仕事ってしんどい!
だからこそ好きなことをする

仕事ってめちゃくちゃしんどくて、僕も涙流しながらやっている時とかあるんですよ。だけどこれが「やりたかったこと」とか「好きなこと」とか「趣味」と思えたら全然やれるんです。だから僕は仕事を仕事と思わないようにしてます。そのためには、好きなことをやるしかないじゃないですか。だからやりたいことをやっていることが、仕事との向き合い方で一番大事なんじゃないかな。だって1日24時間の中で、仕事してる時間ってめっちゃ長いじゃない? それがやりたくないことだったら、やりたくないことで1日生きてるってことでしょ。それは辛いよね。

たしかにそうですね。

高校生は今、先生に守ってもらえている時代です。学校にお金を払って行ってる側だから、先生たちも守ってくれるし、頑張って育ててくれる。それが彼らの仕事だから。でも社会に出ると、給料をもらう側なので、急に周りが厳しくなります。お金を出してる側からもらう側になる。それで、仕事ができる人か会社が判断するわけです。

大人になるのが怖くなりますね…(笑)

僕は今若い子たちには雇われる会社員になるより自分で起業して欲しいなと思うんです。雇われてると学校の傘の中とあまり変わらないから。9時に来てください、12時にランチに行ってください、13時に帰って来てください、16時半に仕事を終えてくださいという会社の決め事に自分の人生を当てはめている状態なので、生きていくのはそれでいいのかっていうところですね。

そうですよね。

学校の勉強も同じで、今まで勉強してきたことって何も勉強じゃなくて。

え…!

今までの勉強は与えられたカリキュラムをするものなんです。でも本当の勉強って、自分でやりたいことを見つけて自分で調べることです。例えばデザインが好きと思って、デザインの本を買って来たり、YouTubeを見始めたらそれがもう勉強です。それが自分を成長させていくんです。だから僕も日々勉強です。自分が面白いと思って調べたことってすごく体の中に入ってくるでしょ。それをいかに増やしていくかが重要です。

 

千原さんはどんな高校生でしたか?

映画・ファッション・音楽…
好きなものをひたすら吸収

高校生の頃は一番しんどかったかもしれないなぁ。モテないし、なんか暗いし、勉強も別に得意でもないし。部活もやってなかったので、ほぼ一人で生きてました。今とほとんど変わらないんだけど、今の僕にコミュニケーションというものがないので、ただのオタクって感じ。バイトしたお金でレコードを買いに行ったり、古着屋さんに洋服を買いに行ったり、漫画を買ったり、本を読んだり。メディアと対話している高校生っていうか。高校生って恋愛も始まったりして、「あのふたり付き合ってんじゃないの?」みたいな話も出るじゃない? それを傍で聞きながら、羨ましいなとか思いながらも、その分1本映画を観てやろうとか、1冊本を読もうとか思っていた、悔しいの塊だった感じかな。

夢中になってたものってありますか?

映画が大好きで、週末になったら映画館に行ってました。レコードも大好きで、当時京都に住んでいたんですが、月に一回、京都と大阪と神戸にあるおしゃれなレコード屋を回って、カッコいいレコードを買って部屋に飾ったりするのが好きでした。

そういった好きなものを学校の友だちと共有するようなことはなかったですか?

なかったですね。インターネットがない時代ですから、情報は雑誌から。「Olive」という女の子向けのすごく質の高いカルチャー雑誌があって、それを毎月3日と18日に買ってるOlive少年でした。大学生になってからは東京に足を運ぶようになって、深夜バスで東京行って、雑誌に載っているレコード屋さんとか古着屋さんに行って帰ってくるという生活を送ってました。Oliveにはスタイリストとかアートディレクターとか、そういう人が出てくるんですよ。裏方の仕事に憧れたのも、この雑誌のおかげですね。

高校生活の中でデザインの才能を発揮されたりすることはなかったですか?

それもなかったね。自分が何をやりたいかまでわかんなかった。こういうのって趣味で楽しんでいただけっていうか。レコード買ってるからレコードジャケットのデザインをやりたいとか、音楽を作りたいとか、雑誌が好きだから雑誌の編集者になりたいとか、映画が好きだから映画を作りたいとかっていう風に繋がってなくて。本当にただ好きで歩き回ってた感じ。

SNSで誰かに見せるとかでもないんですね。

SNSもなかったしね。その夢中になっていたことが、まさにさっき言った自分で勉強してたことなんだよね。当時っていろいろ調べていても、生きている視野が狭いから自分が一番詳しいだなんて思っていないし、世の中にはもっとカルチャーに詳しくて好きな人がいっぱいいるんだと思ってた。デザイナーの仕事を始めたら、そういう人が集まっているんだろうと思っていたけど、意外に僕しかいなかったの(笑)。だから90年代のファッションや東京カルチャーについては、この歳になっても、僕の周りで僕が一番詳しいんです。だからそういうテーマでトークしてくださいと呼ばれたりして、今はそれがすごく強みになってます。

20年以上経ってから仕事に繋がってるんですね。

そう。やっと今、その頃吸収したことを発揮できている感じですね。だから実は今吸収していることやこれから吸収することをすぐ発揮しなくても良くて、将来自分が何か表現者になった時にすごく役に立つという気がします。

 

高校時代、将来についてはどう考えておられましたか?

お母さんを助けるために
就職することだけ考えてた

これはちょっと重たい話になっちゃうんだけど、うちはめちゃめちゃ貧乏だったんですよ。お父さんが離婚していなくて弟が障害を持っていて、お母さんが一人で働いていたんで、何がやりたいとか何がしたいかっていうよりは、高校を卒業したら力仕事でも何でもいいから早く稼いでお母さんを早く楽にしなきゃいけないという意識だけで生きてました。それで、家の近所に毎朝通学途中にチャリで通る、印刷工場があったんです。8時頃いつもみんなが始業のラジオ体操をしていて。ある時、ここにしようかなと思って「働きたいんですけど」ってガラガラって扉を開けて「島本高校の千原と申します。働くにはどうしたらいいんでしょうか」って話をして、内定をもらってきたんです。

すごい…!

僕は就職を決めて来たことを母が喜ぶと思って「高校卒業したらお母さんを助けるから」って言ったら、めちゃめちゃ怒られて。「あんたの人生、私のために働くってされると、私が一生後悔するから、自分で好きなことをやって欲しい」と言われたんです。それは刺さりましたね。親も生きるのに必死で、それまで何か言われたりしたことってほとんどなく、僕も大変なのは知っていたから、あまりそういった会話もしてなくて。「徹也は絵を描くのが上手なんだから美大とか行けばいいのに」とチラッと言われて、その時初めて、母親に僕が好きなことをやって欲しいという意思があること、そんな風に僕のことを思っていたんだということを知りました。だから一度大学に行って、4年間で何をやりたいかを考えて、その後デザインの仕事に就いたんです。今思うと、あの時すぐに働かないでデザインの道に進んだから今があるし、それは良かったなと思います。

それも自分で就職を決めてきたからこそ見えた道ですよね。

そうですね、僕が極端なことやったから(笑)。お父さんがいなくなって障害持った弟と僕を抱えて、マンションとか転々と引っ越しして…当時母も35歳とかだから、今思うとそんなに若いのによくやってたなと思います。今は京都から弟も母も東京に呼んで、僕の家から徒歩5分のところに暮らしてます。

 

「夢の持ち方」について、千原さんはどう考えておられますか?

進んでいく中で変えてもいい
夢に向かって進むことが大事

夢を見つけられる人って本当に少ないと思うんです。夢って唯一、与えられるものじゃなくて自分で見出さなきゃいけないものだから、何が正解かわからないんですよね。戦後であれば日本が豊かになることが国民みんなの夢だったんです。だから当時は仕事は何でもいいわけですよね。日本が豊かになって、マイホームとマイカーを手に入れるっていうのが、僕の上の世代の人たちの夢だった。でも今は国がどうとか生きていくことに対する夢っていうよりは、職業が夢になっていたりするから、そこが難しいというか。僕の場合は、母親が「絵が上手なんだから」と言った言葉が引っかかって、お母さんの思っている自分に寄り添う形で絵やデザインの仕事に興味を持っていったのかもしれないですね。

夢を持つと持たないでは、やっぱり人生は違いますか?

全然違うと思います。何でもいいんです。職業だけじゃなく、誰かを幸せにするというのも夢だし。でも自分が何かを成し遂げたいという思いがないまま生きていくと、ずっと人に左右された人生になっちゃう。それが悪いわけじゃないんだけど、やっぱり生まれたからには何か自分が生きた価値みたいなものを見出したいよね。夢に向かって進んでいく中で違うと思ったらそれは変えればいいんだし、そこで頑張った時間にやっぱり意味があって、また次に頑張れる時間にもなるから。

 

「個性の見つけ方」を教えてください。

個性は自分が見たもの感じたもの
ライフスタイルのすべて

個性はね、自分で作るものじゃない。ライフスタイルのすべてなんです。人から与えられるものっていうか。以前ヒロ杉山さんという有名なイラストレーターの方とトークイベントをした時に、「見てください」って自分の作品を持って来てくれた女の子がいたんですが、一生懸命個性を入れようとしているんです。それをヒロ杉山さんが「個性は入れるもんじゃなくて人から与えられるものだから、ここに出した10枚ほどで見せようと思わないで、100枚、200枚、300枚、血の滲む思いで描いて、それを並べた時に、「この人の個性ってこうなんだ」って人が気付くものが個性」とおっしゃったのが、僕はすごく刺さりました。

深いです…。

デザインの仕事って、意外と個性を出しにくいんです。クライアントからロゴの作成を依頼されたら、その企業のためのロゴだから、僕の個性はいらないわけです。個性を発揮する場ではなくて、その依頼をくれた人のことを100%考えてあげたものを出すというのが正解です。でも意外と僕は不正解をやってるんです。自分の個性を入れてるんですよね。

どういう意味ですか…?

例えばね、以前京都の西陣織工業組合のロゴをみんなで作ってみましょうというワークショップをやったんですが、10チームのうち6チームからほぼ同じ六角形のデザインが上がってきたんです。それは、工場見学に行った時に機織り機の糸を巻きつける部分が六角形になっていたからなんですね。デザインって、みんなが行き着く、シンプルな “正解” があるんです。でも、僕の場合は自分が今感じていることとか好きなもの、昨日観た映画とか子どもがやったこととか、そういうものを関係なく入れ込むんです。

え…!

そうすると六角形のロゴじゃなくて、誰も見たことのないロゴになるんです。そこで「千原さんに作ってもらうと千原イズムの入った個性的なロゴになるよね」と言われます。個性っていうのは、いわゆるその人の生きてる人生だから。生きてることとか、趣味とか、昨日のこと今日のこと、ライフスタイルすべてが個性なんです。それを反映させるってことが大事。

突出した特徴、とかではないんですね。

だって、今一緒にいるふたりも、この後別れて帰路につけば、そこで見るもの、感じるものみんな違いますよね。24時間生きていることが個性で、それをいかに自分の中に留めて出せるかなんです。別におしゃれな服を買いに行くとか草間彌生展を見に行くってことが個性ではなくて、毎日歩いていることやそこで見たこと、感じたこと、そういうことがすべて生きている人の個性だから。そこに新しいもののヒントが絶対ある。

そんな考え方、初めて聞きました…。

だから本当に、個性は作ろうと思ってもできないんです。僕も自分が子どもの頃好きだったものとか感じたこととかをデザインに入れ込んでるうちに、何年も経て、「千原くんの個性ってこういうデザインだよね」と言ってもらえるようになったっていうか。でも個性って何だろう? 自分の特徴って何なんだろう? というのは僕もずっと悩んでました。悩みながらたくさんやっていくうちに、周りからの言葉で気付いていった感じかな。だから悩めば悩むほどいいと思います。

 

これまでのお仕事で印象に残っているものを教えてください。

この仕事をやっていて良かったと
涙が出てくる瞬間がある

最近きゃりー(きゃりーぱみゅぱみゅ)ちゃんが結婚を発表した時の写真をディレクションしたんです。その時にすごく感動しました。僕が考えたアイデアが、幸せな状況としてそこにいるというのを俯瞰で見て、大切なところに携われたことが嬉しくて…こういう瞬間を求めて日々仕事してんだなって。たまにあるんですよね、撮影中に涙が出てくる瞬間とか。

そうだったんですね。

桑田佳祐さんと仕事をした時は、撮影中、僕が桑田さんに説明している光景を見て10年間僕のアシスタントをしてくれていたうちのスタッフの女の子が感動して泣いてました(笑)。僕がサザンオールスターズが大好きで、いつかサザンの仕事がしたいといつも話していたから。そういう感動する瞬間があると、この仕事やってて良かったなと思いますね。

初監督映画『アイスクリームフィーバー』

川上未映子さんの「アイスクリーム熱」という短編小説が原作なんですが、川上さんとは昔から友だちで、ずっとウンナナクールという下着ブランドの広告を一緒に作っているんです。川上さんがコピーライターで僕がアートディレクターで。このブランドのキャッチコピーが「女の子の人生を応援する」なので、そんな映画が作りたいねというところから始まって、話を突き詰めているうちに女の子と女の子のラブストーリーになりました。ちょっとファンタジーな感じもあって、その中に共感を持ってもらえたらいいなと思っています。

  • 監督:千原徹也
  • 原案:川上未映子「アイスクリーム熱」(「愛の夢とか」講談社文庫)
  • 出演:吉岡里帆、モトーラ世理奈、詩羽(水曜日のカンパネラ)/松本まりか
  • 音楽:田中知之
  • 配給:パルコ
  • 7/14(金)全国公開


▼千原社長が心掛けている3つのこと

  1. 俯瞰でものを見る

    一歩引いてものを見られることは一番重要です。日々の生活でおかしなことを発見した時に、“これは意味があるのか”と思えること。そこにビジネスチャンスや新しいデザイン、新しい考え方が生まれます。朝みんなが満員電車でぎゅうぎゅうになっているの、これって本当に正解なのかなとか、そういうことを発見すれば、それがもうビジネスになるんです。

  2. 人に優しくする

    働き始めてまずわかるのは、自分の性格の悪さです。社会って理不尽なことだらけです。だから人にあたっちゃったりイライラしたりするんですよね。でも今日会った人がどれだけ楽しんで帰ってくれるかを考えるサービス精神が、やっぱり面白いサービスやデザインを生むと思っているので、常に人のことを考えて優しくいられるように意識しています。

  3. お金のことは考えない

    お金は人を狂わせます。例えば就職して自分の初任給が18万円なのに友だちが20万円もらっていたら、自分の会社に対して2万円分のイライラが働くと思うんです。簡単に言うとそういうこと。お金のことだけど考えちゃうとあまりいいことはない。だから僕は、仕事は面白いと思える尺度で選んで、ギャラがいいからという基準では選ばないようにしています。

    僕はお金の財産よりは、どれだけいい人と出会って仲間を増やして面白いことをやり続けるかってことが大事だと思ってます。もしお金がなくなって借金1億円を抱えて会社が倒産したとしても、僕が面白いことをやって周りの人に優しくできていれば、みんなが3000万ずつ出して千原くんの会社助けようよってなるわけです。お金のことを考えずに面白いことやってる人って、必ずお金もついてくるし、周りの人がついてきてくれます。

 

千原社長の朝ごはん&モーニングルーティン

千原社長

朝ごはんは、僕が先に起きた時は僕が目玉焼きを作ったり、前の晩ごはんの残りをフライパンに入れてひき肉とか足して卵でとじたりしています。子どもたちのごはんの残りをリサイクルしたチャーハン。深夜2時、3時に帰っても朝は6時半とか7時には起きて、子どもたちが8時15分に家を出るので準備を始めるまでの30分〜1時間が子どもとのコミュニケーションの時間。そこで一緒に映画を観たり野球のバッティング練習を手伝ったりします。夜とかにメールが来るんです。「明日朝早く起きて、昨日の続き観ようよ」とか「野球の練習したいから手伝って」とか。一昨日も『テトリス』という映画を朝の時間を利用して30分ずつ観てました。家族とのコミュニケーションが取れなくなったら何のために働いてるのかって本末転倒ですからね。



高校生へメッセージ

とにかくいろんなものを見て吸収する時期にして欲しいです。楽しめるかどうかがすごく大事。それを発揮するのは、20代後半とか30代に必ず来るので、その時に取っておいた方がいいんです。美大生が卒業制作で大変だって言うから、僕は「卒業制作作るより本読んだ方がいいよ」って言ったんです。吐き出す必要はまだない。高校生とか大学生の脳みそだと大したもの吐き出せないですからね。「でもどうしても卒業制作作らなきゃいけないんです」って言われたから、「毎日本を読むっていう卒業制作にしよう」と言いました。その感想と写真をインスタグラムに上げて、100冊本読んだら、本当に人生が変わる。世の中のすべてがつながるからね。例えば坂本龍一の本を読んだら横尾忠則が出てきて、次に横尾忠則の本を読んだ時にそれがつながったり。小説でもいいし、エッセイでもいいし、たくさん読むことが一番です。


取材を終えて

りな(高3) 取材の準備を進める中で、これまで手がけられた作品からもっとぶっ飛んだ印象の方を想像していたら、まったくそんなことなくて、社会を俯瞰的に見て、日々の生活の中からデザインを見出されていることにまず驚きました。そして個性は特別なことをしたから個性があるのではなく、人から与えられるものという話にもハッとしました。どのお話も想像の反対のさらに違う方向から来る回答ばかりで、「すごい…」「え…」しか言えませんでした。お話を聞けて本当に良かったです。

あいな(高3) 自分のこれまでの考えとはまったく違う、どれも初めて触れる考え方ばかりでした。千原さんのようにクリエイティブな方は日々面白いことや人と違う部分を見つけ出そうとされているのかと思っていたら、お子さんとの朝の時間を大切にされていたり、人との対話を大切にされていたり、当たり前なことをとても大切にされていることにもとても驚きました。また、“発揮する時は今じゃない”というお話もとても印象的でした。私も当たり前を大切にできる人になりたいです。


千原徹也Tetsuya Chihara
75年、京都府出身。アートディレクター/デザインプロデューサー。大学卒業後、関西のデザイン会社に就職。28歳で上京。大手広告会社やファッション関係のデザイン事務所を経て、’11年にデザインオフィス「株式会社れもんらいふ」を設立。広告、ファッション、TVドラマ、企業ブランディングまで幅広く手がける。第73回NHK紅白歌合戦の「LOVE&PEACE~みんなでシェア!~」テーマロゴとキービジュアルを担当。初の映画監督作『アイスクリームフィーバー』が吉岡里帆主演で7/14(金)より公開される。

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