太陽ホールディングス株式会社 佐藤英志社長
身の回りのあらゆる電子機器の中の基板に使われている緑のインク「ソルダーレジスト」が世界シェアの約6割を占め、今年70周年を迎えるグローバル化学メーカー・太陽ホールディングスの佐藤社長にお話を伺いました!
まずはどんな会社か教えてください!
ソルダーレジストの世界シェア1位
グローバル化学メーカー
太陽ホールディングスは、「エレクトロニクス事業」「医療・医薬品事業」「エネルギー事業」「食糧事業」などを行なっている、化学メーカーです。総売上高は1000億円ほど、従業員数は国内外合わせて2500名ほどです。エレクトロニクス事業では、基板の回路を保護するための緑色の液体(ソルダーレジスト)を作っていて、このソルダーレジストを中心とした売り上げが、700億円ほどを占めています。世界シェアの約6割、中でも半導体に使われるソルダーレジストは世界シェアの約9割を太陽ホールディングスが作っています。皆さんの身の回りの電子機器にも我々のインキが使われているんです。
印象的でユニークなCMは、社長のアイデアですか?
太陽ホールディングスは世界的な企業ですが、なかなか名前が知られていないので、まずは認知度を上げたいという思いで、クリエイターさんからアイデアを出していただいて作りました。だから昔のCMでは自虐的なセリフが出てきたりします(笑)
オフィスがすごくユニークとお聞きしました。
美味しくて食べすぎちゃう
理想の社員食堂を実現!
ビジネスの競争に勝っていけるかどうかは、最終的には人と人との戦いみたいなところがあって、社員一人ひとりがよく考えたり、より攻め込んでみたり、そういった少しの差がつながっていきます。そう考えると、会社に行くときれいだし、何か楽しい、ごはんも美味しいし、実験器具もたくさんある…といった職場環境を良くすることは、競争に勝っていくためにも大前提だと思っています。うちの社員食堂は、僕は日本で一番だと思っているんですが、会社の食堂に製麺機を入れて麺を打っている会社なんて、なかなかないですよね。主菜以外はおかわり自由で最近は特にパンも美味しいので、つい食べすぎちゃいます(笑)
他にも所々に飾ってあるアート作品からは、才能や努力の結果で生み出された作品を見て、そこまで自分は努力しているだろうかと社員に刺激を受けて欲しいという思いもあります。居心地のよい職場ではありますが、同時に緊張感も持っていて欲しくて。例えばスポーツも同じで、我々がサポートしているバドミントンの奥原希望選手の話を聞くと、20代でここまで自分を追い込んでいるのかと僕自身いつも気持ちが引き締まります。
海外で事業展開する時に大切にされていることは?
譲れない軸は持ちながらも
現地の文化に合わせていく
まずは太陽ホールディングスとしての文化をぶらさないこと。そして進出した先の文化も同じようにリスペクトすることです。中国でビジネスをすると、大抵1年間で3割くらい、3年でほぼ全員が入れ替わるのですが、我々の工場では、200人以上いる社員が10年以上ほとんど辞めていません。辞めないと技術も熟練されて、生産性も上がっていくんですよね。台湾は創業から30年近く経ちますが、30年来の社員が結構いらっしゃいます。海外でも職場環境を良くすることは大切にしていて、社員から上がる声には一生懸命向き合うので、そういう姿勢が伝わるのかもしれないですね。
社長はどんな高校生でしたか?
あらゆるアルバイトをしながら
社会の縮図を学んだ高校時代
変なやつでしたね。クラスの真ん中にはいないんですが、ボス感はあったと思います(笑)。勉強はあまり好きではなくて、ひたすらアルバイトをしている中で、自分は組織になじめないな、会社員は無理だなと高3くらいで思っていました。理不尽さに耐えられないので、誰かに何かを言われても自分が納得できないと動けなくて。だから大学生の頃には、自分で会社を起こして生きていこうと決めていました。そのためにどうするかと考えて、弁護士か会計士になろうと思ったんです。今もできるだけ社員にとって理不尽さはなくしていきたいと思っているので、一人ひとりの社員にしっかりと自律をしてくださいと伝えています。風通しが良いのか、僕も食堂などで社員から普通に話しかけられるので、転職してきた方が結構驚かれますね。
当時夢中になっていたことはありますか?
アルバイトをしながら、バイクに夢中になっていました。車も18歳になって最短で免許を取りました。引越しやガソリンスタンド、あらゆるアルバイトをした中で、ラーメン屋のアルバイトは一番ハマりましたね。いろんなメニューを出しているお店で、僕も料理を担当して、自分が作って出したものに対して、直接お客さんの反応が返ってくるのが面白くて。100席ほどあって従業員が30名ほどいる店だったのですが、高校2年の終わりくらいから大学4年の最後まで続けて、最後は店全体を任せられていました(笑)。ここで社会の縮図を全部学びましたね。
今のお仕事につながる学びはありましたか?
そうですね。自分より年上の人たちをマネジメントしないといけないので、それぞれプライドを持っている人たちに動いてもらうにはどうしたらいいかをとても考えました。料理を作ることも楽しくて、その経験が今の社員食堂を充実させたことにつながっているように思います。美味しいものを食べて不幸せになる人っていないですからね!
高校生が今ある時間とお金を何に自己投資すればいいと思われますか?
少額でもいいから株を始めると
一気に世界が見えてくる
自己投資より、外に投資するのがいいと思います。今は小さな金額から始められますから、株は高校生のうちからガンガンやるべきだと思います。投資すれば、その会社に興味を持ちますよね。会社の資料にも目を通します。投資をしないでその会社を見るのと、一株でも投資して見るのでは、興味が大きく変わります。自分のお金がかかっていますから、必死に調べてその業界の将来性も考えます。ファッションでも食べ物でも、自分が好きな会社から始めてみればいいんです。
儲かりそうだから買うというより、好きな商品だから買う、という方がいいですね。これを誰かから教えてもらおうと思うと理解するのが難しいのですが、自分のお金をかけてみると、本当に短時間でいろんなことが見えてきます。“自己投資”という意識で何かをしようとすると、評価の延長線上で考えて、どうしても視野が狭くなってしますが、世界はもっと広いです。自己投資は、外への投資が第一歩。それをもとに、自分の将来を考えていけばいいと思います。ただ、FXはやめた方がいいかな。為替だけは誰も先が読めないですからね。僕も社会人1年目で株を始めましたが、高校生からできたら良かったなと思っています。
食用コオロギを育てているって本当ですか!?
昆虫食が話題になる前から
社員の声で開発がスタート
今のように昆虫食が話題になる以前に、「これからはコオロギが世界を救う」と言った社員がいたので、それならやってみようと始めたんです。最初は少しも売れないし、開発も大変だし、どうしようかと思っていたのですが、ここへ来て、世の中が昆虫食ブームになってマスコミに取り上げていただけることも増えました。我々としては、「楽しい社会を実現します」を企業理念として掲げているので、社員が楽しそうにやっていることを邪魔しないようにしています。「食糧事業」では他にもチョウザメを養殖したり、植物工場で野菜を作ったりイチゴを作ったりしています。
感情をぶらさない
喜ばないし、落ち込まないし、怒らないし、悲しまない…できるだけ感情がぶれないようにして、会社の中でも何かそこに佐藤という社長がふわっといる、という感じで安定した平常心を心掛けています。
よく考える
このよく考えるという中には、“インプットする”といった勉強することも含まれています。
決断する
社長が本当に決めないといけない大きな決断は365日の中で一度か二度ほどしかありません。これが一番の仕事。なので、それ以外はふわっとしています。
佐藤社長
高校生へメッセージ
今は内向きになっている学生と突き抜けた人たちが両極化しているとよく聞きますが、特に日本のような小さな国では外に目を広げることはとても大事だと思います。外に向かうには、今環境はどんどん良くなっています。大事なことは、教科書には載っていないですからね。
取材を終えて
あやみ(高3) 社長が高校時代に「自分は組織の中で動くことに向いていないな」と気づいたのは、アルバイトも含めたたくさんの経験からなのかなと感じました。私もしっかりと自己分析をして、自分はどのような道に進むべきなのかを決めていきたいです。オフィスには会社に行くことが楽しみになる仕掛けがたくさん詰まっていて、私もこういう会社で働きたいなと思いました!
ここね(高3) 入った瞬間「とてもキレイな会社だな~」と感じたので、社員さんが会社に行きたくなり、かつリラックスさせすぎず程良い緊張感を保ったまま仕事ができるという環境作りもすごいなと思いました。社長と社員さんの距離が近く、社員さんの意見で新たな取り組みがされているのもすごいなと感じました。
ゆうき(高2) 遊埼玉県民として、CMでもとても馴染み深い企業。どうしても僕が聞いてみたかった「高校生がすべき自己投資」についての質問に、「外への投資」と話された時は一瞬理解ができなかったのですが、外への投資をすることで学びが広がり、仮に損したとしても勉強が自己投資になるという話に、すごく納得しました。刺激的で貴重なお話ありがとうございました!