「タニタ食堂」で一気にその名を広めたタニタ3代目社長、高校時代のスキンヘッド伝説!?

タニタ

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ちほ(高3)・かいせい(高2)

株式会社タニタ 谷田千里 社長

体組成計などの健康計測機器の製造・販売を手掛ける、株式会社タニタ。レストラン「タニタ食堂」を展開し、一気に「タニタ」の名を広めた3代目社長は、調理師免許に栄養士の資格も持つ、ちょっと変わり者…!?


どんな会社か教えてください!

世界初の体脂肪計を生み出し
健康づくりをサポート

会社の始まりは、1944年。戦後、祖父の時代はシガレットケースを作ったり、製造の下請けをしたりしていました。アメリカの視察で、家庭で体重計を使って健康管理をしているのを見て、’59年から体重計の製造を開始。父の代で「はかり」の事業に集中することにしました。健康にまつわる研究を進める中で、医師から、「体重が重くても肥満とは限らない、肥満は体についている脂肪の量で決まるのだ」と言われ、そこで父がピンときて、「体脂肪計」の開発・製造を開始しました。当時、ベストウェイトセンターという肥満予防・改善の指導施設を開設し、糖尿病や腎臓病など食事制限されている患者さんに食事を提供していました。約10年後、このセンターを閉鎖する際に施設を社員食堂に転用しました。その後も、レシピの改良を続けてきたのです。これが500万部を超えるベストセラーとなった『体脂肪計タニタの社員食堂~500kcalのまんぷく定食』(大和書房刊)で紹介しているレシピです。

タニタ食堂を始めた
経緯は?

初めての飲食事業には
いくつもの目的を設定

レシピ本の読者からこのメニューを食べたいという要望の電話がひっきりなしにかかってきたので、まずはそうしたお客様の声に応えるために、東京・丸の内に店舗を作ることにしました。ただ、私の座右の銘は「1粒で2、3度おいしい」です。失敗した場合のリスクヘッジを考えて、目的はいくつも持っておきたい。そこで、自社商品の展示スペースとすること、「飲食」というタニタがこれまでやってこなかった事業に踏み出し、私の社長としての実力を試すというチャレンジ、そして「変わりゆくタニタ」を社員に示す機会にしました。

首から下げているのは
社員証ですか?

歩数や消費カロリーがはかれる
活動量計が社員証替わり

歩数以外にも消費カロリーなどがはかれる「活動量計」が、社員証にもなっています。社員の健康づくりの一環で活動量計を全社員に持たせたのですが、忘れてくる社員もいました。この仕事で食べてるのに、なんで忘れてくるんだよ! ということで、「社員証」も兼ねて、今はこれがないと会社に入れない仕組みにしています。

高校時代は
どんなキャラでしたか?

思い出に残っているのは
レスリング部とスキンヘッド!

どちらかと言うとあまり目立たない、おとなしい生徒でした。立教大学付属の男子校に小学校から高校まで通っていたので、男子校特有のノリの中で過ごしました。高校時代で覚えていることは、廃部寸前だったレスリング部に入って、周りの友だちから「お前何やってんだよ」って言われたこと。他には、ツーブロックの髪型が流行った時代で、周りはエスカレートしていって、上の髪を上げると下の刈り上げ部分に恋人の名前を入れるなどしていたので、私はスキンヘッドにして行きました。誰もこれ以上はできないだろう、ということで。生徒の中では話題になって、他のクラスから見に来られたりしましたが、それ以外はおとなしくしていましたよ(笑)

大学進学をせず、専門学校へ。
当時の気持ちは?

エリート組に対する劣等感はあった
でも無駄になったことは何もない

父への反発もあって、決められたルートになる大学へは行かず調理師学校に進んだのですが、立教大学に進学した周りのエリートの同級生に対する劣等感はありました。今になってみると、良い大学を出ている人よりドロップアウト組の方が、その劣等感からいつまでも勉強し続けている人が多く、新しいことに挑戦しているようにも思います。腐らずに一生懸命やり続けていれば、必ず結果はついてきます。だからどう進んでも大丈夫。私自身、調理師免許を持っていることは「タニタ食堂」という形で今に生きていますし、これまでやってきたことで無駄になったことはひとつもありません。歴史も数学も役に立つ。だからどんなことでも勉強しないのはもったいないなと思っています。

新しいことをすることに
怖さはなかったですか?

怖さはある。ただ、
変わらないことのリスクも見える

もちろん怖さはあります。ただ同時に、新しいことをしないことによるリスクも見えるので、その両方を天秤にかけてどちらが良いかを考えます。今はよっぽど子どもと全力で遊んでいる時以外は、ずっと仕事のことを考えています。外から見れば遊んでいるように見える時でも何か事業に繋がらないかと考えているし、行列ができている店があれば、なぜそれが今売れているのかと考えます。ひとりでいる時は、常に100件くらいの問題を脳裏で考え続けている状態です。答えが出る時は、ある瞬間、そのうちのひとつがパッと意識下に浮かび上がってきて、「あ、あれだ!」と繋がる感じですね。

生徒会で新しい校則を作る時には
何に気を付けたら良いですか?

従来の校則を決めてきた人たちが
傷つかないように根回しする

私も高校生の時にはできなかったし、今だからこそ言える話ですが、私なら利益関係者のプライドを傷つけないようにします。校則というのは、これまで決めてきたOBさんや先生、PTAの方々がいらっしゃるわけです。だから、その人たちがなぜそれを禁止したのかをすべて聞いて理解した上で、彼らの心配事をすべて説得できる話を用意して、先生とPTAさんを巻き込みつつ、先輩にも「先輩方が決めてこられた素晴らしい校則を時代に合うように自分も改善してみたいのですが、ご尽力いただけませんでしょうか」と根回しします。そうすれば、OBさんも「俺らからも学校に言っておいてやる」と協力してくれる。あとは、生徒は変えたい側なんだから、大丈夫でしょ。私も社長になってすぐの頃は、真っ向から否定してたくさん反発を買いましたよ(笑)

    谷田社長が心掛けている3つのこと

  1. 迷った時は「世の中のためになるか」を考える

    社長交代の時に、父から「これから判断を迷うことがあると思う。そんな時、俺は世の中にとって合っていることかを考え、そこに正義があるなら、迷ってもそれをやってきた」と言われました。私も迷った時は、利益にことは一度脇に置いて、それが世の中のためになっているかを考えて判断するようにしています。

  2. 目標を作る時は、複数の目的を設定

    私の座右の銘は「1粒で2、3度おいしい」。自分が思い描いた通りにすべてが成功するとは限りませんから、新しいことを始める時には必ずふたつ以上の目的を設定しています。例えば名刺の裏には新商品の写真を乗せています。それだけで営業に繋がるでしょう。

  3. 原理原則の法則に従う

    そもそも水は上から下にしか流れないので、原則論に基づかないことはやりません。例えば例外的に売れた例があったとしても、原則論から外れる企画は、提案されても却下しますし、自分でもそんな企画は作りません。

谷田社長おすすめの「タニタ食堂」お弁当レシピ

『丸の内タニタ食堂~行列のできる500kcalのまんぷく定食とお弁当』(大和書房刊)より

ふわふわつくね弁当

タニタ

第1弾のレシピ本にも入れた「豆腐つくねバーグ」のお弁当版です。こちらはひじきが入っていないのですが、私が好きなレシピのひとつ。つくねは、スーパーで買った鶏ミンチでも必ず美味しく仕上がる、嬉しいメニューです。

仕事に欠かせないアイテムは?

モンブランの万年筆

タニタ

谷田社長

手帳と万年筆は欠かせません。以前コンサルティング会社に勤めていた時に、先輩から、「時計と靴と万年筆は良い物を持たないと下に見られる」と言われ、万年筆はモンブランのものを使うようになりました。日本ではボールペンタイプ、海外の書類を書く時は万年筆タイプを使っています。
谷田千里Senri Tanida
’72年生まれ。調理師専門学校卒業後、佐賀大学理工学部に進学。船井総合研究所を経て、’01年、タニタに入社。’05年、タニタアメリカ取締役、’08年よりタニタ代表取締役に就任。社員食堂のメニューを提供する「タニタ食堂」や、企業や自治体の健康づくりを支援する「タニタ健康プログラム」などの事業を展開。社員が個人事業主として独立することを支援する取り組みについて綴った「タニタの働き方改革」(日本経済新聞出版社刊)が’19年6月に発売され、話題を呼んでいる。