株式会社成城石井 後藤勝基社長
今月はおいしさにとことんこだわるスーパーマーケット「成城石井」の後藤社長を訪問!毎日セントラルキッチンの料理人さんたちが中心になって作る自家製惣菜や、オリジナル商品、直輸入商品へ込めた思いを聞きました。
まずは、どんな会社か教えてください。
おいしさにこだわった商品が集まる
“会話ができるスーパー”
成城石井は現在全国に約220店舗あるスーパーマーケットです。「SEIJO ISHIIにはOISHII(おいしい)がある」をモットーに自社製造や自社輸入を行い、こだわりの商品を並べています。会社の経営理念にもある “会話ができるスーパー” であることを大切にしていて、何をどんなふうにこだわっているのか、お客様と会話することで商品の良さを伝え、お客様がどんなシチュエーションで何を食べたいかを聞いてご案内させていただくことが大切だと考えています。成城石井で働いている従業員は、食べるのが好きで、話すのが好きな人たちの集団なのかなと思います。
商品開発にかける思いを聞かせてください。
料理人たちの手作業により
成城石井の自家製商品は生まれている!
成城石井には神奈川県の大和市と東京の町田市に計3つのセントラルキッチンがあり、そこで24時間365日、2000人ほどの従業員がパンやスイーツ、和食、中華など、毎日500種類ほどの自家製商品を作っています。商品は極力機械ではなく、シェフたちが大きな鍋などを用いて手作業にこだわって作っているんです。成城石井の一部商品は開発者が製造部隊でもあるので、商品開発は、普段これらのメニューを作っている料理人たちが考えていて、試作を作って意見を貰ってはまた作り直してということを繰り返しています。だから機械的な味ではなく、手作りの味。和食のお惣菜も、料亭のようにだしをきかせて素材の味を生かしているんです。そうした料理人たちのこだわりを店舗スタッフがお客様にお伝えし、成城石井のファンになってくださるといいなと思っています。
社長のお気に入りの商品は何ですか?
成城石井オリジナルの納豆です。納豆ってどこも同じだと思われがちなのですが、成城石井の納豆は、値段は安くはありませんが、食べてみると味の違いがわかります。原料の大豆が高いので、素材の味がしっかりと残っているんです。
あと特徴的なのは自社のセントラルキッチンでつくっている自家製のソーセージです。ドイツの昔ながらの伝統的な作り方をしていて、味もさっぱりしています。一般メーカーの商品ももちろんおいしいのですが、成城石井自家製ソーセージは保存料や着色料を極力使用していないので、親御さんたちからも「成城石井のソーセージなら食べさせられる」と信頼をいただいています。また、定番の自家製プレミアムチーズケーキも、成城石井が直接輸入してきたクリームチーズを使うなど、原材料にもこだわっています。これも開発者であるパティシエが「成城石井にはこの素材があるから作れる」といってこだわり抜いて作った商品です。
社長は私たちに成城石井のブランドイメージをどんなふうに持ってもらいたいと思われていますか?
成城石井には毎日1店舗あたり1000人ほどのお客様がいらっしゃいます。単純計算で、その中の3人ほどはその日が誕生日の方がいらっしゃいますよね。さらに家族が誕生日という人はもっといらっしゃることになります。そうした特別な日や「今日はうまくいかなかったから夜はおいしいデザートが食べたい」といった、ちょっと気持ちを上げたいという時に来ていただけるお店にしたいと思っています。だから毎日1000人中100人ぐらいはお客様やその家族が誕生日であるようなお店にしたいですね。
社長はどんな高校生でしたか?
高校〜大学時代は
ボート部に夢中
明るく活発な、あまり勉強しない学生でした(笑)。ボート部で、部活ばかりに力を入れていました。小学生の頃は野球部のキャプテンだったのですが、自分の野球の才能はここまでだと思って中学校ではサッカー部に入り、ここでもキャプテンになるのですが、能力はなかったので高校では続けずにボート部にたどり着くんです。マイナーなスポーツだから競争相手が少なく、インターハイにも行けるようになったのが嬉しくて、そのまま大学でも続けました。
キャプテンをしていたということは、みんなを引っ張っていく力があったということですよね。
周りより比較的成績が良かったから先生から選ばれただけなんです。中学の時にはうまくチームをまとめられなかった苦い経験があり、リーダーシップは成績ではなく、人間力が大切なんだなと気づきました。
進路や就職先をどう決めましたか?
最終的な判断は
“ワクワクするほうを選ぶ”
なんとなくですが、学生時代から海外に興味があって、海外志向がありました。その上で、最終的な判断は、ワクワクするほうを選んだと思います。成城石井に入って社長になった時も最初に社員に伝えたのは「ワクワクするほうを選べる会社にしたい」ということでした。当社は自社輸入や自社製造など、独自の仕組みを用いることでお客様にワクワクしていただける、おいしいという価値をお届けしています。お客様にワクワクしていただくことはもちろんですが、自身が社会人になる時もワクワクするであろう会社を選んだので、どんな時でも前を向いて一歩を踏み出せたのだと思います。ハレの日にこそお客様に成城石井を選んでいただけるような、お客様に求められる会社でありたいと考えています。
社長に就任してから社内で変えたことは?
成城石井を愛する全従業員が
幸せに働ける環境づくり
成城石井はビジネスモデルとしても唯一無二の仕組みがあって、とても素晴らしい会社です。ただ、社長に就任した時、社内にいる従業員たちがその良さをあまり感じていないのではないかと思い、中核メンバーでこの会社をどうしたいか、もっと自分たちの良さを引き出すためにどうすればいいかをディスカッションしました。おいしさにこだわり、お客様により良い顧客体験をしていただきたいという一人ひとりの熱い思いは成城石井の強みです。そこでこれらをさらに伸ばし、全従業員でひとつの方向を向けるように、ベクトルを合わせていく必要があると考え、お客様に成城石井を愛していただくためにも、まずは従業員にとって働きがいを感じられる環境づくりに取り組むことにしました。このミーティングにはグラフィックファシリテーターの方にも入ってもらい、出た意見をリアルタイムでイラストや言葉にして模造紙に描き出してもらいました。今でもそれらの模造紙を見ると熱い気持ちを思い出すことができます。
「ファイブスター・コンテスト」のような、社内接客コンテストの制度もすごくいいなと思いました。
基本的にスーパーはお客様自身がセルフサービスの業態なので、自分で商品をカゴに入れてレジに持って行って、自分で買物袋に入れて持って帰りますよね。そうすると人件費が削減できローコストでサービスが提供できるんです。ただ成城石井は私たちがお客様の買物袋に入れるサッキングのサービスを行っていて、その時間で会話ができると考えています。効率性から考えると真逆のことをしているのですが、私たちはお客様とコミュニケーションを取って、少しでも温かい気持ちになってもらうことを目指しているので、接客については他社とは考え方が違うところがあるかと思います。
▲オフィスに貼られた、ディスカッション時に出た意見をイラストや言葉でまとめた模造紙からは、社員さん一人ひとりの成城石井に対する熱い思いが伝わってきました。
自分の強みをどう見つけて伸ばしていきましたか?
目の前のことを一生懸命していれば
周りが機会を作ってくれる
自分の強みってなかなかわからないですよね。ですから、周りの人の評価から知る部分もあると思います。私は商社に入って10年間は水産物、マグロの商売をしていて、その後小売業のスーパー業界に異動したのですが、その時も周りの方の勧めで入り、“これが自分の天職だ” と思うことができました。目の前のことを一生懸命やるというのがまずは大切で、そこでしっかりやっていると周りが見てくれて、「こういうことが向いているだろうからチャレンジしたら?」と色々な機会を作ってくれると思います。それが10代で見つかる人もいれば、20代、30代、今も探している人もいると思うし、それは人によって違うと思います。私は劣等生だったので “これが強み” というものは特になかったですが、昔から「大器晩成」だと思っていたので、粘り強くやっていたことが今に繋がっているのかもしれません。
明るく、前向きに、粘り強く
同じ仕事をするにしても明るくコミュニケーションするのと暗いのではまったく内容が変わります。小売業は単価の小さい商品を毎日お店で販売し、当社の場合、自家製と呼ばれる一部の商品は365日24時間我々のセントラルキッチンで2000人以上の従業員が働いて極力手作りにこだわり、一つひとつ製造しています。そうした積み重ねで成り立っている仕事なので、粘り強くやっていくことが大切だと思っています。
相手の立場に立って考える
何かする時にはどうしても自分を中心に考えがちですが、相手の立場に立ってコミュニケーションを取り、相手が今どういう状況なのか、こういうことを言われたらどう感じるか、一呼吸置いて考えてから発言するようにしています。
自信を持って謙虚に行動する
1万人ほどの従業員がいる会社を経営する上で難しい判断をしなければいけない場面では、時には自信を持って行う必要があります。ただ一方で、自信過剰にならず謙虚な姿勢で仕事をすることも大切です。若い頃はなかなか自分に自信が持てず、家の玄関に「自信と謙虚」と書いた色紙を置いておき、それを見て会社に行くようにしていました。

高校生へメッセージ
皆さんの世代は既成概念や日本という国に縛られることなく、ワクワクするほうにチャレンジすれば、自分が想像していなかったような未来が一気に広がると思います。私の息子も高校3年生ですが、高校2年の時に留学し、そのまま海外の大学に進学する道を選びました。その判断はすごいなと思いますし、たとえうまくいかなくて日本に帰ってきたとしても、彼にとっては大きな自信になると思うんです。最初に踏み出した半歩の勇気は自分の人生にとって絶対にマイナスにはならないので、恐れずにチャレンジすれば、人生は必ず豊かになると思います。頑張ってください。
取材を終えて
取材終わり、廊下でセントラルキッチンの責任者の方や、バイヤーさんたちと鉢合わせ。高校生の私たちに「社長の取材だったの!? 社長、“明るく、前向きに、粘り強く!”しか言ってないんじゃない?」と冗談混じりにおっしゃって、皆さんとても楽しそう。社長との気さくな関係性が垣間見えて、とても良い社風なんだなと感じました。
▲出していただいたお茶が本当においしくて驚きました。これも成城石井のオリジナル商品で、メーカーさんに驚かれるほど、上質な茶葉を使っているのだとか。
えみり(高3)
成城石井は高校生には少しハードルが高いお店というイメージを持っていましたが、取材後、お話を聞いた商品の味を確かめてみたくなって買ってみると、自家製チーズケーキもクッキーも納豆も、とにかくおいしい…。価格の背景には理由があって、それがブランドとしてのこだわりや思いにつながっていることがわかり、印象が大きく変わりました。
まひる(高3)
私も飲食店でアルバイトをしていて、接客は会話のキャッチボールだと思っているので、成城石井さんの“会話ができるスーパー”というコンセプトにとても共感しました。取材時にいただいた「ポルボローネ」がおいしすぎて、次の日すぐに他の味も買ってみました。学校の友だちにも大好評でした!
かのん(高3)
後藤社長からは仕事に向き合う真剣さや熱量がひしひしと伝わってきて、圧倒される思いで話を聞いていました。社内で思いを共有するための工夫も行われていて、社長からも広報の社員さんからも会社や商品への愛が伝わってきて、受験で不安な私にとって、とても勇気をもらえる時間でした!
こうへい(高3)
後藤社長は僕たちがどんな質問をしてもすぐに、明確に答えてくださって、「社長って本当にすごいんだな」と思いました。でも若い頃は自信がなくて、玄関に「自信を持つ」ということを書いて貼っておき、会社に行く前に確認していたというエピソードも身近に感じられてよかったです。
ゆま(高2)
これまでターゲットのお客さんの年齢層が高めのイメージだった成城石井さんですが、おいしさへのこだわりのエピソードを聞くと一気に興味が湧きました。社長が心掛けている3つのことはどれも大切にしたいと思うことばかりで、私も粘り強く、迷った時はワクワクするほうを選択していきたいと思いました。
にこ(高2)
オフィスに掲示してある社員さんの思いが詰まったボードを見て、会社全体で同じ気持ちで同じ方向に向かっているのがとても素敵だなと思いました。商品開発の際には、その商品が一番おいしくなるよう、細かなところまでこだわりがあって感動しました。商品の裏話をもっと知りたくなりました!
すい(高1)
社長が大切にしている3つのことは、私たちの日常生活でも意識すべきことだと思いました。取材が終わって改めてお店に行ってみると、店員さんが目を合わせて笑顔で対応してくれて、とても気持ちよく買い物ができ、本当に“会話”を大切にしているお店なんだなと実感しました。
▲帰り道、横浜駅で成城石井さんのガチャガチャを発見。商品の開発の熱い思いを聞いた後だと、愛おしさ倍増です。しかも可愛い!











