社長に会いたい|PPIH(ドン・キホーテ)吉田直樹社長「今自分がやりたいことや進路の答えが見つからなくても大丈夫」

ドン・キホーテ, 吉田直樹, パン・パシフィック・インターナショナル, PPIH

株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)
代表取締役 吉田直樹社長 CEO

高校生も愛用! まるでアミューズメントパークのような圧倒的な商品数を誇る“驚安の殿堂”「ドン・キホーテ」。
今月はPPIHを率いる、吉田直樹社長にインタビューして来ました!

 

まずはどんな会社か教えてください!

始まりは1978年。
泥棒市場という小さな商店からスタート

株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以下、PPIH)は1978年に泥棒市場という小さな商店から始まった企業です。その後、府中市にドン・キホーテ第一号店を開店しました。現在はグループ全体で国内に約600店舗、海外に約100店舗あります。PPIHグループの中核業態である「ドン・キホーテ」は、「コンビニエンス+ディスカウント+アミューズメント」の三位一体を店舗コンセプトとする総合ディスカウントストアです。食品、日用品をはじめ、雑貨、衣料品、家電製品、ブランド品、バラエティグッズまで、約45,000アイテムを取り揃え、地域商圏内における、商品の価格・価値・品揃えの“一番店”として、お客さまに常に選ばれる店作りを目指しています。

 

地域に合わせた店舗展開などを従業員の方に任せるというスタンスにはどんな思いがありますか?

従業員みんなに
ドンキという舞台で輝いて欲しい

ドン・キホーテは、陳列が得意な人、仕入れが得意な人、マネジメントが得意な人、いろんな優秀な人たちが集まった、アルバイトも含めて従業員数約9万人の会社です。個性が強いから、みんな得意なことも多いし、その代わりに不得意なことも多い(笑)。そこはお互いに補っていけばいい、というのが私たちの考えです。僕も入社前に安田隆夫創業会長兼最高顧問から「ドンキという舞台で輝いてくれよ」と言われたんです。すごい口説き文句ですよね。「好きなようにやってくれ」と言われても実際はそんなことないだろうと思って入ったら、本当に好きなようにやらせてもらえて。一緒に働く仲間も本当に素晴らしくて驚きました。好きにするといっても、もちろん売り上げの結果は大切です。それはお客様に支持されているという証ですから。

(広報K) 僕も大学時代にアルバイトをしていて、そのまま入社したのですが、アルバイトの頃から、店の仕入れなどを任せてもらっていました。ドンペンサンダルを作ったのも僕です(笑)

今日のch FILESさんの取材も(広報から)「これは出ないとダメです!」と言われて…。え、僕高校生に何話していいかわからないよって言ったんだけど。その話を安田会長にしたら、「それぐらいの情熱を持って言われたなら、出ないとダメだよ!」ってリアクションが返ってきて。味方してくれると思ったら、広報の後押しをされました(笑)。一人ひとりの個性を大事にしたいというのがドン・キホーテの考えです。

 

ドン・キホーテを築いた創業者・安田会長ってどんな方ですか?

どこかドンペンに似ている…!?
コワモテで迫力満点、でも優しい

僕たちにとっては、“お父さん”のような存在です。もちろん一からここまでを築いてきた人ですから、迫力はあります。ドンペンみたいな感じ。このモデルは会長自身じゃないかなと思うんですけど(笑)。仕事には厳しいんだけど、基本的に面白いんです。厳しい話をするミーティングでも、最後ににっこり笑って「任せたよ!」と言うんです。

僕も初めて会った時、何かを説明しようとしたんだけど、緊張して自分でも何を言っているかわからなくなって。会長も明らかに怒ってる感じだし、僕も焦って空振って、もう会ってもらえないかなと思っていたら、最後に「また会おうね!」と言ってくれました。そうやってたくさんの人の人生に関わってきた結果が、この約9万人という会社になっているんだと思います。社長として会社を預かるということは、働く従業員の人生を預かっているんだということを、会長に教えてもらいました。

 

安田会長から引き継いだドンキらしさはどんなところ?

“お客様にとって
最も都合のいい店”であること

「心掛けている3つのこと」で挙げた内容は、すべて安田会長が言ってきたことです。会長は「ドンキは大衆芸能」と言うんです。だから、「カッコいいことをやっちゃダメだ」と。それから「主語を転換しろ」というのも、ずっと言われています。お店において、お客様を大切にするのは当たり前、それ以上に、主語をお客様に転換して、僕たちが売りたいものではなくて、お客様が欲しいものを揃える。“お客様にとって最も都合のいい店”でないといけないというのは、安田会長から引き継いでいる部分です。当たり前のようですが、これを約9万人が実行すれば、すごい力になるんです。そうした集団としての力も会長から教わったことですね。

 

吉田社長が新たに変えたことはありますか?

「主役は従業員」
従業員が第一のステークホルダー

これは変えたわけではないのですが、「従業員が第一のステークホルダー」ということは、4年前社長に就任した時からはっきり言うようになりました。会社にはお客様や仕入れ先、銀行、株主などたくさんの関係者がいます。これを経営の世界では「ステークホルダー」と言うのですが、この中で誰が一番大事かということは度々経営者の中で議論されます。よく言われるのは、会社は株主のものという考え。私は、従業員が一番と考えています。

 

吉田社長は、どんな高校生でしたか?

クラスの中の調整役
それは今にもつながっている

もうあまり覚えていないんだけど、当時から音楽が好きで、バンドをやっていました。でも今思うと先生を困らせる理屈っぽい嫌な学生だったかなと思います。クラスのリーダーというよりは、対立している人たちの間に入って調整をするコーディネーターのような感じでした。それは今にもつながっているところはあるかなと思います。

 

大学卒業後、マッキンゼーを経てコンサルとして独立、ドン・キホーテで社長…というキャリアプランは、学生の頃から見えていた?

プランはゼロでした。高校生の頃は、世の中の役に立ちたいと思っていたけど、具体的には何もわからず。ただ、働くことは好きだから、それぞれの場所で手を抜いたことはなくて、一生懸命働いてきたら、結果的に、安田会長が僕を見つけて、“こいつ面白そうだから誘ってみよう”と思ってくれたんですね。振り返ると、あの時真面目にやっておいて良かったなと思うことがたくさんあります。後々自分に戻ってくることがあるんです。だから今まったく違うことをしているけど、素晴らしい仲間たちと一緒に働いて、高校時代の夢は叶っていますね。

その道のりって、一つひとつ進むごとに次が見えてくるという感じだったんですか?

特に20代の頃は、ずっともがいていました。大学を卒業する頃まではどちらかと言うと成績も良かったし、それほど苦労したことはなかったのですが、就職してからは、何をやっても認めてもらえないし、暗黒の時期でした。30代は、命に関わるような病気もしました。ただ、その時々で、必ず助けてくれる人がいたんです。そういう人たちのおかげで何とか前を向いていくことができました。

人生は良いことばかりじゃないですから、皆さんも辛いことがあって苦しくなった時は、勇気を出して「助けてください」と手を挙げると、必ず誰かが皆さんのことを見つけてくれると思います。僕にとって安田会長はそういう存在です。僕の仕事も、誰か小さく手を挙げている人がいたら、見つけることだと思っています。


▼吉田社長が心掛けている3つのこと

  1. タイムリミットを守る

    PPIHは正社員だけでも1万5000人以上、アルバイトの方々も含めると9万人以上が働いている会社で、24時間営業している店舗も多いので、誰か一人が期限を遅らせるとすべてが狂ってしまいます。会社は共同作業なので、タイムリミットを守ることはとても大切です。

  2. 多様性を認める

    PPIHグループはドン・キホーテ含め世界に718店舗あり、従業員も正社員やアルバイト、性別、年齢、子育て中だったり二つ以上の職場を掛け持ちしていたり、働く環境もさまざまです。お客さんも世界中からいらっしゃいますから、いろんな方がいて当たり前。だから個々を認めることを大切にしています。

  3. 主語を転換して考える

    最小限のルールはありますが、店舗の展開や新しい商品の提案・開発などは従業員に自由にやってもらっています。カラコンだって、僕は着けたことはないけどみんなは買いますよね。だから「自分」を主語にせず、いろんな人を主語にするのが、僕たちの仕事だと思っています。

 

吉田社長の朝ごはん&モーニングルーティン

吉田社長

今朝はたまたまイチゴを食べたのですが、普段はコーヒーとヤクルトだけ。朝は5時頃起きて出社するまでの3時間ほどのルーティンをとても大切にしていて、まずストレッチをして、お風呂で湯船に浸かります。これは必ず365日。それからコーヒーを飲んで、ポッドキャストでアメリカの報道などを聴きながら植物の世話をして、新聞を読んだり読書をします。ここは情報収集の時間。ポッドキャストはいいですよ。無料で英語の勉強にもなるし、海外事情に詳しくなるので、何年も続けています。その後1時間ほど仕事の整理をしてから出社します。



進路に悩む学生へメッセージ

自分がやりたいことや進路の答えって、若いうちにみんなが見つかるわけではないと思います。30歳で見つかるかもしれないし、僕が尊敬している須賀敦子さんという作家さんは、60歳で作家デビューして、69歳で亡くなりました。短い作家生活ですが、素晴らしい作品をたくさん残されています。僕も43歳で、自分が一番大好きな今の仕事に出会いました。大学を卒業して20年も経ってからです。だから安心してください。今はまだ核心の答えは見つからないかもしれないけど、一生懸命考え続けてみてください。人生は答えを見つけようとすること自体にも、僕は意味があると思っています。



取材を終えて


PPIH本社で取材後、ドン・キホーテ中目黒本店へ直行!
これまで何気なく見ていた「担当者おすすめ」は、“本当に”担当者こだわりのおすすめ品だったことを今日の取材で実感した一同。
オリジナル商品ブランド「情熱価格」に記される熱い想いの一つひとつまで、じっくり読んでしまいました…。

かな(高3)
想像していたより遥かに人間味があって、温かくて、笑顔が素敵な社長でした。「僕は安田会長に見つけてもらった」とおっしゃっていたのも印象的で、人との出会いに対しても、ドン・キホーテに対しても強い愛を感じました。すごく今の時代に合った素敵な会社だなと思います!

ひなの(高3)
吉田社長がとても「人」を大切にされていて、店舗の従業員さんにそれぞれ得意な分野を任せたり個性を活かせるような会社づくりをされていることに感動しました。ドンキには他には売ってないカラコンがあって、情熱価格のお菓子がユニークでいつも思わず色々買っちゃいます(笑)

みき(高2)
仕事の経歴は、プランがあったわけではないけど、それぞれの場所で目の前のことに一生懸命取り組んできたとおっしゃっていて、それだけモチベーションを保てていたことがすごいなと思いました。進路に悩んでいたので、“自分が本当にやりたいことは、今はまだ見つからなくても大丈夫”というメッセージで気持ちが楽になりました。

吉田直樹Naoki Yoshida
‘64年、大阪市生まれ。’88年、国際基督教大学教養学部卒業。’95年、INSEADで経営学修士を取得後、大手コンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンに入社。コンサル会社経営を経て、安田隆夫会長(当時社長)の誘いで’07年、株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)に入社。Don Quijote(USA)Co.,Ltd. の社長などを経て、’19年より現職。