「12時間でも24時間でも時間を忘れて没頭しちゃうほど“好き”」|ユーグレナ出雲社長

ユーグレナ

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株式会社ユーグレナ 出雲 充 社長

世界の食料問題を救うミドリムシが、次はジェット機を飛ばす!?
驚異的なスピードでミドリムシの研究開発を続ける株式会社ユーグレナの出雲社長にインタビュー!


どんな会社か教えてください!

世界から注目される
「ミドリムシ」で世界を救う!

「ミドリムシ」(微細藻類/学名:ユーグレナ)を培養して、食品や化粧品の製造販売、バイオ燃料の研究開発を進めています。動物と植物の性質をあわせ持つミドリムシは、ビタミン、アミノ酸など栄養豊富。世界中で注目されNASAも研究をしていましたが、まだ誰も屋外大量培養には成功していませんでした。僕たちは世界で初めて屋外での大量培養に成功。世界の食料問題を解決すると共に環境問題も解決するため、今は2020年までのバイオジェット燃料による有償フライト実現に向けて動いています。

社長とミドリムシとの出会いは?

大学1年の夏に
バングラデシュで目の当たりにした
食料問題がきっかけ

大学1年生の夏にバングラデシュに行った時、それまで自分が“当たり前”だと思っていたものが、何ひとつないことに衝撃を受けました。バングラデシュは作物が育ちにくく、世界で一番貧しいと言われている国です。子供たちは学校に行けず、ごはん(米)は食べているけど、カレーに具はなく、栄養素がまったく足りていない。帰国後、僕は動物と植物の性質をあわせ持つ「ミドリムシ」が栄養問題を解決する存在だということを知り、文系から農学部に転部して、ミドリムシを大量に培養・供給する技術の研究を続けました。

銀行員と研究を
両立する生活を選んだのはなぜ?

僕は結局、銀行員としても
研究者としても
三流でしかなかった

大学卒業後、銀行に入行した一番の理由は、研究するためのお金がなかったからです。どうしたら銀行からお金が借りられるのか、お金のことを勉強したいと考えました。勤務先の銀行と大学が近かったので、平日は毎日銀行で働いていて、夜と土日は大学で研究しました。その時は銀行で成功して、研究でも成功することができるかなと思っていたんですが、やっぱり二兎追っちゃダメなんですね。大学の先生に「出雲くん、世の中には24時間365日ミドリムシの研究をしている人がいて、それでも難しいのに、半分銀行員で土日に研究している状態で成功すると思いますか? 銀行員として成功するというのも同じです。銀行員として成功したいと思うなら、土日に研究に来るのは、銀行に対しても失礼ではないでしょうか」と言われて。もう本当にその通りだなと思ったんです。僕は銀行員としても研究者としても一流になれていなかった。そこで研究一本に絞りました。

銀行を辞めてミドリムシ研究に
絞ることに不安はなかった?

自分が決めたことに
言い訳なしで飛び込むからこそ
人にできないことができる

みんなに「不安はなかったんですか?」「ある程度研究の目処が立って、ミドリムシで成功できることが見えたから銀行を辞めたんですよね?」と聞かれます。だけど、逆なんです。ミドリムシの研究が成功する確信なんて、僕は持っていませんでした。ミドリムシの研究をしている時は、「これをやって成功するかな」とは考えないんです。そんな風に考える隙もないくらい、ミドリムシを研究するのが好きなんです。成功するかどうかわからないから「やらない」じゃなくて、できるかどうかわからないけど好きだから「やる」。重要なのは自分で選んだ選択肢に言い訳なしで飛び込むことだと思います。

目標を見つけるために
高校時代に何をすればいい?

人生のテーマに出会うには、
自分の知らない場所に
行ってみること

実は僕もバングラデシュでショックを受けるまでは、将来のことなんて何にも考えていませんでした。アメリカでは”Getting out of your comfort zone.”(今いる安心できる場所から出て行きなさい)と言われますが、自分が安心している場所で人生のテーマと出会うことは、なかなかありません。家の中でウィキペディアのバングラデシュの情報を見て、何かをしたいと気持ちまで動くことはないのではないでしょうか。一見逆のようですが、人生のテーマに出会うには、自分が行ったことのないところ、自分が緊張するところ、つまり楽しくないところに行ってみることだと思います。

夢に向かって粘り強く
頑張れる源は何?

12時間でも24時間でも
時間を忘れて没頭しちゃうほど
“好き”なんです。

夢と言っても、そんなにカッコいいものじゃないんです。ミドリムシでバングラデシュの子供が元気になってくれたら、本当にやっていて良かったと思うし、もっと勉強しようと思えます。周りから、「もう休んだら?」と言われても、もっと良いミドリムシを作って大勢の人に喜んで欲しいと思います。なぜならそれが単純に楽しくてしょうがないからです。また、石油のあまり採れない日本でミドリムシ入りの燃料で飛行機が飛んだら、みんなが喜んでくれると思います。これは理屈じゃなくて、夢なんです。皆さんも自分の好きなことをやり過ぎていて、気が付いたら“もうこんな時間!?”ということはありませんか? 人が素晴らしい奇跡を起こす時って、時間を忘れて没頭している時だと思います。僕は研究していると本当に時間のことを忘れちゃいます。12時間でも24時間でも。18時間くらいになるとトイレに行きたくなって集中力が途切れてしまうことがありますが、お腹がすいて集中力が途切れることはありません。“時間を忘れて没頭する力”、これだけはロボットや人工知能にはできないことです。

僕が尊敬しているIPS細胞の研究をされている京都大学の山中伸弥先生や青色LEDを発明された名古屋大学の天野浩先生も皆さん同じようなことをおっしゃいます。以前お会いした際「先生、なんでそんなにすごいことができたんですか?」と聞いたら、「ずーっとぶっ通しで研究して、はっと気が付いたらできました」っておっしゃっていました。だから自分が時間を忘れて没頭するほど好きなものは何か、ということは絶対に忘れない方がいいと思います。それがその人の個性なのです。

    出雲社長が心掛けている1つのこと

  1. 自分が一番やりたいことを
    「ひとつ」選ぶこと

    例えば学校だと地理が100点でも数学の点数が悪いと、「数学を頑張りなさい」と言われますよね。僕はそれって、なぜなの!? と思うんです。親も学校の先生もみんな、平均的に全部良くさせようとしますが、そんなの無理で、個性が薄くなってしまうだけだと思います。

    これからの時代は、特に他の人と同じように平均点を取ることより、これだけは好きだから寝ないでずっと没頭していますという分野を持っていること、何か一芸に秀でていることの方が、価値があるのではないかと思います。僕は国語が苦手だったけど、ミドリムシのことは世界で一番詳しくなりました。今は世界中の人が「ミドリムシについて教えてください」と僕を訪れてくださいます。

    2020年に向けて、今僕らは石油のあまり採れない日本で、ミドリムシなどを使った国産のバイオジェット燃料のジェット機を飛ばそうとしています。選択肢を絞ることは勇気がいりますが、自分が一番やりたいことをひとつ決めて選ぶこと、得意なことに集中することはとても大事だと思います。

仕事に欠かせないアイテムは?

写真と手紙のファイル

出雲充

出雲社長

24時間365日、どこへ仕事に行く時でも、大切な人と一緒に撮った写真といただいた手紙はずっと持ち歩いています。これは2006年のノーベル平和賞の受賞者であるムハマド・ユヌス先生とバングラデシュのシェイク・ハシナ首相、そして安倍総理。僕らの研究はバングラデシュや日本の政府にも応援してもらっています。疲れたなと思った時にはこの写真を見ると、眠いけど頑張ろうと思えます。それでもまだ疲れたなという時は、『スラムダンク』と『はじめの一歩』の漫画のセリフを見ます。『はじめの一歩』の一場面で、ボクシングの鴨川会長が「努力した者が全て成功するとは限らない。しかし、成功した者はすべからく努力している」ということを言っています。「こんなに頑張っているのに、なんでできないんだろう」と思う瞬間がありますが、これはまだ自分に努力が足りないということだと考えています。他の人ができないからといって諦めたら、ダメなんです!その気持ちを忘れないように、いつでも持ち歩いています。

出雲充

ミドリムシ

出雲社長

野菜・肉・魚などに含まれる59種類の栄養素を持つミドリムシは、バングラデシュで毎日約10,000人の子供たちに給食としてミドリムシ入りのクッキーが配られるなど、栄養問題で苦しむ世界中の子供たちを支援しています。
出雲 充Mitsuru Izumo
‘80年生まれ。東京大学1年の夏に旅行したバングラデシュで貧困に苦しむ子供たちの食料事情に衝撃を受け、帰国後、文科三類から農学部に転部。ミドリムシの研究を始める。卒業後、東京三菱銀行へ入行。翌年、退職し、’05年8月株式会社ユーグレナを創業。’14年12月、東証一部上場を果たし、’15年1月、第1回日本ベンチャー大賞の最優秀賞である内閣総理大臣賞を受賞。