幻冬舎 編集者・箕輪厚介さんに高校生が直撃!『死ぬカス』の読み方【高校生版】

死ぬカス

幻冬舎の編集者として数々のビジネス本のヒットを飛ばしているといま大人の間で話題になっている箕輪厚介さんの著書『死ぬこと以外かすり傷』を読んで、気になったことを箕輪さんご本人に聞いてきました!

一時のブレイクで終わらせないために、
高校時代は基礎体力をつける時!

まず『死ぬこと以外かすり傷』を読んで、このタイトルとまったく新しい考え方にびっくりしたんですけど、もし箕輪さんが今の時代の高校生だったら、SNSでめっちゃいろんな情報を取ったりされてましたか?

箕輪 どうだろう…想像でしかないけど、高校生であればあまり情報を取ろうとかは思わないかな。高校生の頃は、友だちと楽しく話したり部活を頑張ったり、勉強が好きな人は勉強を頑張ったり、どちらかと言うと内に内にいった方がいいんじゃないかなと思います。「これからビジネスはこうなる」とか「これを知らないとヤバい」とか言われても、実際にそれを知らなくてもヤバいわけじゃないからね。それより、もっと自力をつけるというか、基礎体力をつけた方がいいと思うな。世の中のトレンドじゃないことでいいから、今何かに夢中になることが後々生きてくると思うから。

じゃあ特に高校生のうちからこれをしておいた方がいい、とかじゃないんですね。

箕輪 もちろんやりたいことが決まっているなら、それはすごく良いことだと思うし、頑張ったらいいと思うよ。でも変に“起業しよう”とか“アプリ作ろう”とかはしなくてもいいと思うな。そういうので「天才高校生」みたいにメディアに取り上げられた人って、その後伸びない人が多いような気がするんだよね。それって、結局自力がないっていうか、足腰が弱いからなんじゃないかな。時の運でブレイクすることはあったとしても。そもそも“人生を楽しむことができる”っていう人間性こそが大切だと思うから、今は高校生っていうことを楽しめばいいんじゃない?

箕輪さんは高校時代を楽しまれてましたか?

箕輪 めちゃくちゃ楽しんでましたよ(笑)。高校も大学も、本当楽しかったです。

モテました!?

箕輪 いやー、中高男子校だったから、これ男子校あるあるで、学園祭くらいしか女の子と話すことはなかったですけど(笑)。でもクラスの中心の輪にはいたタイプかな。

なんか、男子の友だちめっちゃ多そうですよね。

箕輪 男ウケはするかもね(笑)。それは今も変わってないから、だいたい俺が作る本って男しか読まない、男子校ノリなんだよね。

さっきの基礎体力をつけるってことについてもう少し教えてください。

箕輪 社会に出て悩むのって、だいたい“自分はどんな人間か”っていう部分にぶつかった時だと思うんだよね。もちろん正解はないから、永遠に悩み続けるんだけど、その原点は、時間が膨大にあってお金を稼ぐ必要がない学生時代に磨かれるものだと思うから、その時に“これをやって楽しい”とか“これをやっている時が一番我を忘れられる”というものに、どれだけ触れられるかじゃない?

なるほど。

箕輪 だってさ、結局ビジネスで上手くいくとか金が儲かるとかチヤホヤされるとかは表面だけの話で、例えば時代が変わって、それまで超イケてた自分の会社が倒産してしまうなんてことは、よくある話でしょ。その時に、大きく崩れずにもう一度立ち直れる人は、“俺はこれが好きだ”というものがあるからなんだよね。それって、社会に出てから見つけるっていうより、学生時代なんじゃないのかな。

箕輪さんの場合は、それは何になるんですか?

箕輪 俺は、雑誌や書籍の編集とか、何か物を作って世の中を楽しませることだね。作った物が正しいとかどうとか関係なく、人が楽しいと思えればいいなと思ってるのよ。だから例えば俺のビジネスがうまくいかなくなって貧乏になっても、何か不祥事を起こしてテレビに出られなくなっても、“人を楽しませるコンテンツを作ることが好きだ”という足元は崩れないんだよね。またゼロから始めればいい、っていうだけで。

死ぬカス

失敗はむしろブランド
本当のリスクは、もっと別の場所にある

高校時代から、今のように、リスクに飛び込むことってできましたか?

箕輪 飛び込むタイプではあったとは思うけど、リスクに突っ込むというのは目的じゃなくて、結果的にそうなることなんだよね。例えばさ、何かを好きで好きでしょうがないことがあって夢中になりすぎていると、周りから見れば「おい、それ危ないよ」っていうことでもやっちゃうじゃん?

あ、はい。

箕輪 そういうことなんだよね。別にリスクに突っ込もうと思ってやっているんじゃなくてさ。だから、「リスクに突っ込め」って本で書いている真意は、どうしようかなって悩んでいるなら、やっちゃえよ、っていう感覚。

リスク、怖くはないんですか?

箕輪 まったく怖くないよ! むしろ失敗がブランドだからね。

え、失敗がブランドですか!?

箕輪 だってそうでしょう? もちろん成功もブランドだけどさ、どちらにせよ普通だったら無理だよね、っていうことをやらないと、やってないことと同じだからね。チャレンジすることによって、周りの人はまるでマンガの主人公を見るように、その人が大失敗したり大成功したりしながら挑戦していく様に魅了されて、応援していくんじゃないかな。

やってみれば、何とかなるっていうことですか?

箕輪 うん、逆に何とかならないって、どういうこと?

一文無しになるとか…?

箕輪 一文無しになっても、死ななくない? 本にも書いてたけど、高校生の頃にイタリアとスペインに一人旅して、その時パスポートを失くして、お金もほとんどなかったけど、別に死にはしないな、と思ったし。ほんとに困る? 一文無しになったとして。

困らないのかなぁ…。

箕輪 高校生で一文無しになるってなかなかないだろうけど、もし何かの理由でなったとしようよ。そしたら、例えば「あの時取材で話した箕輪さんって人に連絡してみよう」って連絡してみればさ、俺も事情聞いたら5万円くらいならあげるよ、って言うかもしれないじゃん。

たしかに…。

箕輪 そこから人間関係もできていくわけだからさ。何も起こらなかったら何もないけど、失敗だったとしても何かが起これば予期せぬ出会いとかアイデアとか出てくるから、リスクってほんとにないよ。本当のリスクは、良い大学出て、良い会社入って、「やれ」って言われたことをやり続けたのに、その会社が潰れて必要とされなくなった時だよ。今の銀行マンではそれが起こってるよね。

そういう、敷かれたレールを飛び出すきっかけみたいなものが箕輪さんにはあったんですか?

箕輪 きっかけというか、俺は逆に普通に生きることができなかったんだよね。きっと銀行マンをやっても、お金とかすぐ失くしちゃうし、お客さんの通帳も失くしちゃうし。だから、俺の場合はこういう方法で生きざるを得なかったという方が近いかもしれないね。

死ぬカス

これから求められる人材は
何かひとつに圧倒的に強い人

でもこれからの時代は、そういう人が強くなってくるってことですよね?

箕輪 これまでは平均的な人が強かったと思うんだけど、これからは何か大きく欠けていてもいいから、何かひとつが強い人が必要とされると思うよ。俺みたいにおもしろいことを作るってこと以外何もできない人には、他の部分を支えようとしてみんなが集まって助けてくれるけど、全部が平均的にできる人だと誰も集まらないってことが起こっちゃう。

周りから支えられるのは、箕輪さんのコミュニケーション力とか人柄が愛されるからっていうのもありますよね。

箕輪 たしかに人の気持ちを想像したり、みんながワクワクするようなことを言ったり、コミュニケーション能力は人より高いと思うけど、もっと大事なのは、“結果を出しているか”じゃないかな。俺がどんなに話がおもしろくても、本が売れてなかったら認められないだろうし、どんなにコミュニケーション能力が低くて愛嬌がなくても、やることなすことが結果になっていれば、人は付いて来ると思う。素晴らしいデザインが作れる人だったりね。同業者から見ても他業者から見ても圧倒的な実力があるということは大事だよね。

じゃあ、やっぱりひとつ自分の強みを見つけて深めるというのが大事なんですね。

箕輪 本当、そこだけだと思う。俺、高校の頃って勉強できなかったんだけど、国語だけはめちゃくちゃ良かったの。期末テストとか全科目下から5番目とかだったんだけど、実力テストの国語だけは上から10番以内に入っちゃうみたいな。だから、作家になるとは思わなかったけど、編集とかコンテンツを作る方の人になるんだろうな、とは思ってたかな。大学の時に流行っていたミクシィというSNSで日記を書きまくってたり、自分の好きなことだけやっていた感じで。

好きだと思うことでも、続かないことってありませんか?

箕輪 飽きたらやめればいいんですよ。その時点で、もう好きなことじゃなくなってるってことだから。ただまずは死に物狂いでやらないと、おもしろくもならないから、極端に頑張ってみるっていうのは大事だと思う。

「極端に」ってどんな感じなんですか?

箕輪 ケーキめっちゃ食べたいけどダイエット中。だけど食べちゃうって感じ。好きなことは我慢せずに、欲望に完全に振り切るってことかな。それが勉強であっても遊びでも恋愛でも何でも。そうしてでしか見えないことってあると思うんだよね。だいたい今成功していると言われている起業家の人たちは、やらなければいけないことは無視して、何かに没入したものが仕事になってる人だからね。

例えば私すごいオタクなんですけど、それってヲタ活したいけどお金もないし成績も落ちるな、っていう場合でも…?

箕輪 当たり前じゃん! 「好き」は極限までやらないと! お金がないけどどうしても好きなことをやりたいっていう時に初めてアイデアが浮かぶわけじゃん。例えばZOZOTOWNの前澤さんも、早稲田実業高校に通っていたけど、当時バンドにハマり過ぎて、高いギターが買いたいからって学校を休んでまでバイトをしたり物を売ったりしてたらしいし。そういう人の方がサバイバル能力は強くなるんだと思う。極端に偏愛とか狂気みたいなものを持っている人は、人を惹きつけるよね。だって、日本一オタクになったとしたら、きっと秋元康は「会いたい」って言うと思うよ。それは才能だから。でも電通の何とか局の局長なんですけど、って言っても秋元康は会いたいと思わないよ。そんな人、いくらでも代わりがいるから。だから年齢とか関係なく、ユニークな存在であるということは、誰もが魅力を感じる部分だと思うな。

箕輪厚介Kosuke Minowa

幻冬舎の編集者。’85年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。『多動力』(堀江貴文)、『人生の勝算』(前田裕二)、『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』(佐藤航陽)など高校生でも耳にしたことのある経営者の著書を次々とヒットさせている。

BOOK INFO

『死ぬこと以外かすり傷』
(マガジンハウス)
¥1,512(tax in)