今話題の女性落語家・桂二葉さんってどんな人?「桂二葉のワクワク落語会」に行ってきました!

公演を終えた桂二葉さんにお話をお聞きしました!

落語との出会いを教えてください。

二葉 笑福亭鶴瓶師匠を生で観てみたくて、寄席に行きました。子どものころはあまり喋らないタイプだったのですが、内心ではずっとクラスの男子たちがアホなことをやっているのを羨ましくて。だから人前で堂々とアホなことができる落語を観て、「これだな!」と思ったんです。

落語に出会うまでの将来の夢はなんでしたか?

二葉 小さい頃からなりたいものがなくて、ずっとモヤモヤしていました。保育園や小学校の卒業のタイミングでよく将来の夢を聞かれると思いますが、ケーキ屋さんかお花屋さんって言っとけば大人は喜ぶやろって、ケーキ屋さんって言ってました(笑)

一度正社員として就職をされていますが、落語家へ転身することに不安はありませんでしたか?

二葉 人生をかけて博打を打っているようなものなので、もちろん不安はありました。でも、常にスリルを味わっていたいタイプだから、その不安がたまらなかったんです。でも、やるからには絶対これで食べていくという決意は固いです。修行期間中はボロボロのアパートに住んで、机の引き出しを開けてどこかにお金がないか確認するくらいお金がなかったし、悩むことありましたが、師匠が優しくてご飯を食べさせてくれたり、周りの先輩が相談に乗ってくれたりしたので乗り越えることができました。落ち込んだときは奮発してカツ丼とエビフライを食べて気分を上げるようにしていました。

実際に落語の世界に足を踏み入れてみて、想像と違ったことはありますか?

二葉 事前に本や新聞記事を読んで業界の予習をしていたので、大きく違うことはありませんでしたが、思っていた以上に体質が古くて男女差別がまだまだ残っています。ただ、男性がやってきた芸能なので、女性には難しいこともありますが、その難しさの理由を考えるのは楽しいし、女性落語家の醍醐味だと思います。「女には古典落語なんかできるわけがない」とか「お茶子(舞台で座布団を運ぶ人)しかできへんやろ」とか散々言われてきたので、女性落語家として初めて「NHK新人落語大賞」をいただいたときは痛快でした。最近は着替え用に楽屋に仕切りが用意されている寄席も増えてきて、だんだん業界としても変わっては来ていますし、私も後に続く人たちのために、嫌なことは嫌だとはっきり言うようにしています。

落語の練習はどのようにされているのでしょうか?

二葉 入門してから3年間は修行期間なので、毎日師匠の家に通って家事をして、2週間に1回くらい稽古をつけてもらいます。前で師匠が3回実演してくれるので、その3回のうちに覚える口移しという稽古ですが、覚えられるわけないですよね(笑)。それくらいの気概がないと落語家としてやっていけないということでなんしょう。最初に教えてもらったのは「道具屋」という15分程度のネタですが、覚えるのに10ヶ月かかりました。3年間で10本の演目を覚えるのが基本ですが私は頭が良くないので7本しか覚えられなかったです。二豆さんは優秀なので13、4本も覚えていました。修行期間が終わると師匠が台本を渡してくれるようになるので、それを覚えます。

『落語の国の精神分析』(藤山直樹 著)に落語家には「演じている自分」とそれを「見る自分」の分裂が存在すると書かれているのを読みました。二葉さんもそうなのでしょうか?

二葉 いろんなタイプの落語家がいるので一概には言えないですが、私は自分がどう喋っているか客観視していますが、登場人物の気持ちに嘘があると嫌なので、演じているというよりは私の言葉で話しています。落語をしているときは全てを見透かされているような、裸を見られているような感覚があります。どれだけ技術があっても嫌な人間の落語は気分が悪くなるから、下手でも人間性が大切だというのは大師匠の米朝師匠がいつもおっしゃっています。だから私は嫌な人間にならないように気をつけています。

落語初心者にお勧めの演目を教えてください。

二葉 今回やった「金明竹」はわかりやすいのでお勧めです。私が初めて落語を観たときは内容が理解できなくて、どこで笑っていいかもわからなかったです。でも理解したかったので、何度も寄席に足を運んで、隣の席の人の反応を観ながら「ここが笑いどころか!」って。何度も観ているうちに1回目にはわからなかった面白さがわかるようになってきますし、同じ演目でも演じる落語家によって印象が全く変わるので、1回目で面白さがわからなくても、少なくとも3回は観てほしいです。

5月からは「探偵!ナイトスクープ」の探偵としても活躍されていますね。

二葉 あまりテレビを観ないで育ってきて、松本人志さんのことすらよく知らないわたしになぜ声をかけていただいたのかわからず恐れ多いですが、探偵なので謎を解決出来るように頑張りたいです。最近はテレビできれいに大阪弁を話す方が少ないので、きれいな大阪弁を多くの人に聴いていただけるチャンスだとも思っています。本当の大阪弁はもっと上品で、「でんがな」「まんがな」なんて言わないんですよ。

今後ますます活躍の幅が広がっていくと思いますが、挑戦してみたいことはありますか?

二葉 サントリー ドリンク・スマートのCMでナレーションをさせていただいたのが楽しかったので、声優をやってみたいです。あとは料理が好きなので料理番組も。料理研究家の土井善晴先生と一緒に番組ができないか、お話をさせていただいています。

桂二葉


第7回上方落語若手噺家グランプリ 準優勝
令和3年度NHK新人落語大賞 優勝

旧き良き大阪ことばが息づく古典落語を守り演じながらも、上方に暮らす愛嬌あふれる人々、たくましく生き抜く人々を現代の新たな感覚で活きいきと描く。2011年の入門以来、「女性が古典落語を演じることは難しい」と言われてきた定説を覆そうともがき、令和3年NHK新人落語大賞で女性初の大賞を受賞。約300年続く古典芸能である落語の世界に変革をもたらすべく奮闘を続ける。

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