【よしもとTALK】ニューヨーク「頑張ったというより無我夢中でやっていた」

いろんな経験をして慣れておくと
ドシっと構えることができる

今月の特集は「進路」がテーマです。私たちは進路で悩むと他のことが何も考えられなくなっちゃうんですが、おふたりもお笑いことなどで悩んだりすることはありますか?

屋敷 お笑いの悩みは、みんなの年齢の時に悩んどった感覚とはちょっと違うかな。いろんなことを経験すると、なるようにしかならへんって境地になっていくから、不安で夜も寝られへんっていう高校生の時にあった感じはもうないな。全然俺らの方が不安なんやけどね。みんなの方が希望に溢れとるし、可能性が広がっとると思うから。特に芸人になった時点で、まともに考えると不安しかないっていう状況やったから、20代の時は、考えへんようにする能力だけはどんどん備わっていった。あんまり深く悩んでないイメージやね。

嶋佐 俺も悩んでた時は芸人どうしよかなって思いましたけど、思い切って飛び込んでなった部分があったので、いろんな経験していろんなことに慣れておいた方が、大人になってどうしようって迷った時に、いい意味でドシっと構えることができるかなとは思いますね。

悩んだ時は誰かに相談されますか?

屋敷 あまりしないかもね。芸人なろうかやめようか、京都の大学に行ったんやけど、東京の会社に就職するか大阪の会社に就職するかとかで悩んだ時もあったけど、結局自分で決めました。例えば芸人になるかどうかって時に、実際の芸人の方に「芸人ってどんな感じですか?」って聞くのはいいけど、「僕芸人になった方がいいですかね?」って聞くのはなんか、意味ないかなって思いますね。結局決めるのは自分やから、判断材料としていろんな情報を仕入れるのはいいけど、選択を誰かに委ねて聞くっていうのはあんまりね。

嶋佐 たしかに。でもネタを何しようか、賞レースでどれがいいかなって時は。

屋敷 それは、聞くようになったね。それも失敗の上にやね。今まで聞かなさ過ぎて、みんなに「何であのネタやったん?」とか言われて、じゃあ一回聞いてみようって聞くようになったって感じかな。

嶋佐 だからその時々によるね。俺も芸人になるかどうかの時は、誰にも相談しなかったかな。自分で決めて、むしろその後に、いろんなヤツに報告した。決めた後、不安になったりするから。もう決めちゃって、「ちょっともう行くわ」って報告したかな。そこから話を聞いてもらった方が気が楽というか。

ニューヨークのおふたりが今トップの芸人さんとして、たくさんの芸人さんを見てこられて、トップになる人とならない人との違いって何か感じますか?

屋敷 ええ!? トップ? 今トップって言うた?

嶋佐 俺らトップだと思ってるってこと?

屋敷 いや、まったくわからんなぁ。でも10年以上やっとると、めっちゃおもろいのに売れへんかった人とか、こいつが? って思う人が売れたりとか、売れるやろなって思ってたらやっぱり売れたとか、全部見てきたけど、だいだい思い通りにいかへんし、今年のM-1誰が決勝いくやろとかもわからんし。

嶋佐 そうだね。でも本当に嫌なヤツは売れないよ。みんな優しいからね、芸人さんって。

屋敷 でもいいヤツやからって売れるわけじゃないねん。

嶋佐 そうそう。俺もドラマの世界でしかわからないけど、それこそ「梨泰院クラス」とかさ、すげぇ嫌なヤツだけど、一代を築いたじゃん、お父さん。でも芸人にはそういうのはない気がするんですよ。バレちゃう。なんかこう、人間でやってるというか。そんな気はしますね。あとは運です、すべて。

運は自分でどうこうできるものですか?

嶋佐 いや、できないでしょうね。もう生まれた年次が違ったらすべて違う。

屋敷 でも全部運やからって何もせんかったら絶対売れへんし、一応ちゃんと頑張っとるヤツだけがくじ引き引けるみたいな感じです。だからだいぶキツいですね。

芸人さんを始めてから、一番頑張った時のことを教えて欲しいです。

嶋佐 ネタ作りですかね。テレビとかは見てたけど、やっぱりネタの作り方とかは全然わからなくて、とりあえずデビューしてから見よう見まねで、とりあえずいっぱい作ってきたので。

屋敷 逆に言うと、ネタ以外のことは何も頑張ってないというか。例えば、今これをしていたら「アメトーーク!」に呼ばれるかもしれへんとか、俺のツッコミをこういう風にしたらテレビに呼ばれるかもしれんとか、逆算で考えることは性格的にというか能力的にもできんかったから。かと言って俺らよりネタ頑張ってる奴はいっぱいおったから、頑張ったとは言われへんかな、別に。

嶋佐 それは結構当たり前というか。ネタはみんながやってるので。頑張ったって言うより無我夢中でやってたって感じですね。

屋敷 うん。あと基本的には楽しかったので、修行感が薄いというか。若手の頃って、夜中の0時から朝5時まで稽古して、8時から夕方の17時までバイトして、ライブ出て、ちょっとだけ寝てまた夜中の0時から5時までみたいな生活を繰り返すんですけど、俺頑張ってるなって感じじゃなかったです。そらやるやろっていう感覚でしたね。

嶋佐 芸人やってるなーみたいなね。

屋敷 だから、受験勉強より頑張った感は全然ないですね。

嶋佐 そもそもがやりたいと思って入ってやってることだから、っていうのはありますね。

屋敷 でも今これでまったくテレビとか出られへんかって芸人辞めたとしても、もっと頑張っときゃ良かったなとは思わないので、頑張ったのかもしれないですね。そういう意味では。

その当時、誰かに言われた言葉で、響いた言葉はありますか。

屋敷 響いた言葉かぁ。

嶋佐 当時ライブで出演者が順番にネタやっていって、お客さん投票で順位を決めるみたいなのをやっていた時に、俺らなかなか上位にいけなかったんです。そんな時に、先輩の芸人さんとかが、「ニューヨーク面白いから大丈夫でしょ」みたいに声を掛けてくれて。それで何とかやっていけたみたいなところはありますね。

屋敷 それがなかったらマジで一瞬で辞めてたもんな。自分たちとしては間違いないやろって思ってやっとるのに、全然投票が入らんかったから。でも自分が面白いと思う芸人の先輩が面白いって言ってくれたから「よしっ!」って励みになって、なんとなくやれた感じです、ほんとに。

おふたりが、私たち高校生に今高校生のうちにしておいた方がいいと思うことがあれば教えていただきたいです。

屋敷 何だろうな、難しいね。勉強でも部活でも何でもいいから熱中しといたほうがいいよ、みたいな、そういう感じでもないもんね。

嶋佐 熱中できないものはできないからね。無理して熱中する必要ないし。

屋敷 逆に俺が本気でやっておけばよかったなと今思うことって何だろうな。ベタかもしれんけど、毎日、日記書いときゃよかったな、とは思うかな。なんとなく書いとったような気もするんやけど、結構飛ばし飛ばしで適当やったんよね。その時の気持ちとかを客観的に書けとったら、今読んだらだいぶ面白いやろうし、こういうインタビューしてくれた時に読み返してその時の気持ちとか思い出せたやろうし。今もう何も覚えてないから。

嶋佐 いろいろあったとは思うけど、忘れちゃってるからね。日記いいかもね。

屋敷 俺も書いとったりしてたけど、日記ってやっぱり恥ずかしいんやろな、赤裸々に書かれへんやん、高校生の時って。だからこそ、書いといたら良かったなと思うね。テストでいい点とった時のリアルな気持ちってどんなんやったかなとか。めっちゃ仲良かったヤツとちょっと喧嘩してもうた日の気持ちとか、人と話しとると思い出したりするんやけど、そんなん書いとったら良いかなと思うね。

最後に、6月25日から始まる単独ライブ「Last Message」に向けた意気込みを聞かせてください!

屋敷 俺は高校生の頃からめちゃくちゃお笑い好きやったけど、M-1とかバラエティー番組は見ていても、単独ライブなんて見たことないし、お笑いのDVDも見たことなかったよね。だから、読者の高校生の子たちも、もし生まれて初めて見るお笑いライブが僕らの単独ライブやったら、そんな素敵なことはないなと思います。もしかしたら人生の転機になったり、ちょっとでも刺激になったりしたら嬉しいなと思うので、ぜひ一回見て欲しいなと思います。

嶋佐 みんなアーティストのライブとかは見たことあっても、芸人のライブ見たことある人って少ないと思うからね。だから一回はね、芸人の単独ライブっていうのも見てみて欲しいかな。今オンラインチケットもあってどこからでも見られるので。やっぱり、みんなみたいな高校生に、お笑いはもっともっと見て欲しいなって思うな。

屋敷 ほんとにそうやね。俺はそれこそみんなと同じ年齢の時にM-1見て芸人に憧れたけど、別に俺らの単独ライブ見て芸人目指す人が増えて欲しいとかは思わへんけど、やっぱりちょっとでもお笑い芸人のことを好きになってくれたらいいなとは思うかな。

嶋佐 今みんなコムドットとか見てるでしょ?(笑) YouTuberもいいけど、芸人もね、YouTubeやってる芸人もいっぱいいるし。高校生たちにたくさんチェックして欲しいな!


今月の特集テーマ
ニューヨークの「芸人の道に飛び込むことができた理由」

屋敷

俺はテレビ制作のADをやってたんですけど、そのまま10年後、ディレクターになったり、偉いさんになる未来があんまりワクワクせんかったんですよね。それやったら、もうずっと気持ちに蓋しとった芸人になりたいという気持ちを開放してしまおう、みたいな。人生一回きりやしって感じでした。

嶋佐

俺も、普通の仕事で「これやりたいな」というのがなくて…。たぶんこのままそんなにやりたくない仕事やっても絶対出世できないタイプだし、これはちょっとやばいなって、むしろ普通に働くのが怖くて。俺にとっては普通に就職するほうが恐怖というか。それを感じて、芸人になりました。

読者プレゼント

ニューヨーク単独ライブ「Last Massage」

6/25(土)・26(日) 大阪 COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
7/30(土)・31(日) 東京 恵比寿ザ・ガーデンホール

詳しくはこちらにアクセス!
ニューヨーク

嶋佐和也(しまさかずや)
1986年5月14日生まれ
山梨県富士吉田市出身
NSC東京校15期生

屋敷裕政(やしきひろまさ)
1986年3月1日生まれ
三重県熊野市出身
NSC東京校15期生

2010年1月コンビ結成