映画『くれなずめ』松居大悟監督|高校生のお悩み相談「自分の個性はどう確立すればいいの?」

松居大悟

今月の「高校生お悩み相談室」は、
映画『くれなずめ』の松居大悟監督にご回答いただきました。

4月29日(木・祝)より公開予定だった本作、
新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言で、公開が延期。
「近日公開」予定なので、引き続きチェック!

松居大悟

自分の個性はどう確立すればいいの?

なつみ(高2) 私はヘアメイクさんになりたいのですが、自分のカラー(個性)をどう出せばいいのかわかりません。どの作品にも独特な空気感を残されている松居監督は、自分のカラーを確立するために意識してこられたことはありますか?


20代までは、カッコつけずにがっつく!

松居 僕も高校卒業してから大学時代や20代は、とてつもなくもがいていて、自分のカラーを出さねば、自分にしかできないものを作らねばということをずっと考えていました。特に僕のように若い歳で作り始めている同世代をめちゃくちゃ気にして、これはすでに誰かにやられているな、というのを潰していき、映画も演劇もMVもドラマも、ジャンルの垣根を越えて作るという、誰もやっていない方向を選びました。空回りしたこともたくさんありますが、結果的にそこで出会えた人たちとは今も関係が続いています。

30代になってからは逆に自分のカラーは出さなくていいや、それより自分が信用している人とやりたいことを話しながら創作したいと思うようになりました。それからの方が、むしろ作品のカラーって出るようになっていて。それは僕が書いた本を読み込んで、照明のプロやメイクのプロ、それぞれのプロがチームで作り上げてくれているからだと思うんですけど。『くれなずめ』後半の超展開での成田君が扮する格好も衣装・メイクからの提案で作り上げました。

だからまずは、一度もがく! 特に高校から大学くらいの時は、カッコつけてもしょうがないので、やりたいことはとにかくやる! 専門学校に行きたいなら行ってみればいいし、誰かに弟子入りしたいなら手紙を書いてみればいい。僕も初めて観てお芝居をやりたい、と思ったきっかけでもある僕の師匠、劇団・ヨーロッパ企画の上田誠さんにinfoから何通もメールを送って、返事をもらって交流が始まったり。がっついて失うものはないですから。むしろがっつかないことで後悔する方がもったいない!

本当にやりたいことなら、思いつく限りの方法を取ってみればいいと思います。やらないなら、その程度のものだったんだとも思うし。自分のやりたいことは、やり進めていくうちに変わることもあると思います。例えばヘアメイクをしたかったのか、映画に関わりたかったのか、人と何かを作ることがしたかったのか…と細分化されていく。ヘアメイクじゃないなと思えば、その時に方向を変えればいいんです。僕もお笑い養成所に行ったり、いろいろ試してみて、自分は“人と一緒に作ること”がしたかったんだと気付きました。一つずつ“これは違うな”というものを潰していけばいいんじゃないかなと思います。

専門学校に行こうと思っていて大学も気になっているのであれば、一度専門学校に行って、大学に入り直してもいいんだし。いくらでもやり直しはきくので!

一度選んで、たとえその道が間違った方を選択していてもいいってことですね。それはすごく安心します。理系文系を選ぶだけでも、本当にこっちで合ってたのかな、と不安になるので。

松居 そういう意味では僕は逆をいきました。めっちゃ数学が得意だったので、逆に文系にしようと思って。文系の人たちはみんな数学が苦手だから(笑)

良い成績が取れるってことですね! すごい策略家!(笑) では最後に映画『くれなずめ』を高校生にどんな風に観て欲しいか、メッセージをいただけますか?

松居 大人になればいろんなお別れを経験していくんだけど、高校生は、この映画を観た時に自分の経験の中に思い当たるフシはないかもしれません。だけど、なんだか訳のわからない感情になると思うんです。その訳わからない感情を“訳わからない!”とそのまま受け止めて欲しいですね。僕はその鑑賞体験が忘れられず、“表現って面白い!”と思い、この世界に入りました。頭で理解しようとせずに、『くれなずめ』に振り回されて、『くれなずめ』を浴びてください! そして観た後に友だちと「あれってどういうこと!?」と話して欲しいですね。


くれなずめ
  • 監督・脚本:松居大悟
  • 出演:成田凌、高良健吾、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹、他
  • 配給:ローソンエンタテインメント

©2020「くれなずめ」製作委員会

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