社長に会いたい|コールマン 中里豊社長「僕が今高校生なら、1ヶ月ほどキャンプに行きたい。きっと一生の思い出になる」

コールマン, 中里豊

ニューウェルブランズ・ジャパン合同会社 コールマン事業部 中里豊社長

今月は、キャンプ用品のコールマンの日本の最高責任者、中里社長を訪ねました!
キャンプの魅力はもちろん、社長の進路や就職のこと、海外旅のことまでたっぷりお聞きしました!


まずは、どんな会社か教えてください!

創業は1900年
ガソリン式ランタンが始まり

今年2025年で創業125周年を迎えるアメリカ生まれのブランドで、1900年にアメリカのオクラホマ州でガソリン式の貸しランプ業を行ったのが始まりです。日本市場は来年で50周年を迎えるのですが、日本のお客さまとアウトドア文化と一緒に育ってきたブランドとも言えると思います。現在日本には直営店が11店舗、2000店舗近くの卸しや小売店のお客様とともに販売させていただいています。

コールマンの商品の強みは?

お客さまが快適にアウトドアで生活できるということを、いろんな面で意識しています。コールマンらしいデザインはもちろん大切にしながらも、使い方やコストパフォーマンスで感じていただく快適さも重視しているので、発売前には今マーケットにどんな製品があるのか、どんな機能で価格はどれくらいなのかは徹底的に調べています。



社長が思う、キャンプの魅力は?

時間を気にせず
友だちや家族、自然とつながれる

キャンプの魅力は“つながり”ですね。我々のビジョンで“心のつながり”と言うのですが、友だちや家族、自然とつながること。僕は空や海はずっと見ていても飽きないんです。だから仲間や家族と外でゆっくりできることは、僕にとっては最高の贅沢です。昔は当たり前だったかもしれないけれど、今の世の中、何も考えずに時間も気にせず人とゆっくり過ごす機会って、なかなか他にないですよね。

中里社長流のキャンプの楽しみ方はありますか?

食事はあまり張り切らず、基本買って行きます。みんなで美味しいものを食べようという時は別ですが、普段家族で行く場合は食事には時間をかけず、買って行ったものを軽くつまみながらのんびりと過ごします。夏はよくひとりで海に行くので趣味のサーフィンで海にいくときは、前の夜に現地に入ってキャンプして翌朝海に入る、ということもあります。

高校生にはどんなキャンプを経験してほしいですか?

週末を使ったキャンプでもいいけど、せっかくなら2〜3週間行ってもらいたいなと思います。僕が今高校生なら1ヶ月くらい行きたいな。仕事を始めるとできなくなってしまうし、時間のある今しかできないと思うから。友だちと山にこもるって、楽しそうじゃない? 小さい頃、自分の基地とか作らなかった? キャンプってそういうワクワクした感覚かな。海外にキャンプに行ってもいいし、そうした経験って一生の思い出になると思います。


社長は、どんな高校生でしたか?

高校はシカゴの現地校へ
サッカーのおかげで友だちができた

僕は中学生までは日本にいたのですが、高校1年の時に父親の転勤でアメリカのシカゴに行ったんです。だから高校生活は転校生からの始まりでした。日本にいた頃はサッカー部で活発で、典型的な賑やかなクラスで目立つタイプの子だったのです。いきなりアメリカに行って、しかも2400人の生徒のうち95%以上が白人、日本人は6人というアメリカ郊外の典型的な白人社会の現地校に転校しました。最初の1年は、サッカーはするけどほとんどしゃべらない静かなアジア人という印象だったと思います。学校に行ってわかることは、チャイムの音と “Good morning.” と “Good-bye.” くらい。でもサッカーばかりをしていたおかげで友だちができて、1年ほどすると言葉もなんとなく聞こえるようになって、2年目くらいから話せるようになってきて、3年目には日本にいた時の素の自分でいた記憶があります(笑)。いろんな変化があった3年間でした。

英語の力はどうやって伸ばしたんですか?

僕にとって英語は生活手段だったので、覚えていかないとどうしようもないところもあって。サッカーをしていたのでサッカーの言葉は覚えていくし、部活の仲間は僕がわからないことを知っているからサポートしてくれました。徐々に「ごはん何食べる?」「遊びに行く?」といった言葉が聞こえるようになって。聞こえないと自分が何か悪いことを言われているんじゃないかと不安になってしまうんだけど、聞けると嬉しいんだよね。最初は単語しか話せなかったけど、言葉って通じればいいから、身振り手振りも使いながら話せるようになっていきました。

他に何か当時夢中になっていたものや集めていたものはありますか?

そういえば、当時、“ジャグ” というコールマンの水筒があったんです。サッカーの練習に行くとみんなはコールマンを使っていて、僕だけ日本のブランドの大きな魔法瓶を使っていたんです。その時どうしてもみんなと同じのが欲しくて、親にお願いして買ってもらったのが、最初のコールマンでした。今でもよく覚えています。色はコールマンの典型的なグリーンでしたね。


大学卒業後、仕事や就職先はどんな基準で選びましたか?

アメリカで過ごしてきた経験から
海外に行く機会が多い会社を選択

当時は今ほど情報もなく、大学生の頃は将来どころか、考えていたのはせいぜい1週間先のことくらいでした(笑)。大学ではヨット部に夢中になっていて、春に大会があったので、それが終わって家に帰ったら郵便ポストに就活の案内が入っていて、それで現実に戻されました。ただ部活の先輩で商社に入っている方も多かったし、漠然と世界を相手にするんだなというイメージは持っていたかな。それで、海外に行くチャンスが多い会社ということで、丸紅を選びました。

丸紅勤務の後、化粧品企業のロレアルや今のコールマンなどに転職する際の基準はまた別ですか?

そうですね、その時はまた変わりました。僕の人生はあまり参考にならないかなと思うのですが、丸紅に入って30歳になる頃に、なんとなく先が見えちゃったんです。今振り返れば若気の至りではあるんですけど、先が見えたレールの上を走っている感じがして会社を辞めて、1年半ほどアジアに放浪の旅に出たんです。その時は次どこに行くかなんて正直何も考えていなかったんだけど、“これから自分の人生が始まるのか” とワクワクした気持ちでいました。その後、「君、面白いね」とロレアルに拾ってもらいました。僕は化粧品に興味があったわけではないのですが、マーケティングやブランドマネジメントをしてみたかったというところで、相性が良かったのかなと思います。結果、ロレアルでは11年お世話になりました。


社長はどうやって自分の長所を伸ばしてきた?

長所は “なんとなく得意かな” と
“人より好きかな” の間にあるもの

今高校3年で、受験の面接や書類で「長所と短所」を聞かれる場面が多いのですが、長所がわからず困ってしまいます。社長はどうやって自分の長所を見つけて伸ばしてこられましたか?

自分ではわからないですよね。でも長所は見つけるものではない気もします。長所は、人より長けていることと好きなことの間にあるように思うのですが、なんとなく人よりこれが得意かな、人より好きかなということってないですか? それは遊びでもそうだし、例えば人を集める場面で自分は率先して人を集めているなとか、逆に集めないなとか。自分が人とちょっとズレている時、もしくは自分が人に合わせようとしている時、それはもしかすると短所ではなく、自分の長所かもしれません。例えばスポーツ選手のようにずば抜けた才能がある必要はなくて、少し人より好きなものや得意なことが2〜3個あれば、その塊が長所なのだと思います。僕もいまだに「これが長所」と言えるものはないです。それに好きなものは変化するし、アップデートしていかないといけないものだと思うしね。

社長がロレアルでマーケティングをやりたいと思った時も、「好き」という気持ちで決めた感じですか?

そうです。“やりたい!” という気持ち。得意かどうかなんて、一切気にしなくていいと思います。やりたいという純粋な気持ちに勝るものはないですよ。やってみて合う合わないはあるかもしれないけど、まずは自分の気持ちに素直に従うのがいいと思います。好きなもののほうが続けられるからね。ビジネスでもそうですが、新しいことをやってみることはとても大事です。


海外生活の経験が活きていることはありますか?

環境が変わる経験を繰り返し
“頼るのは自分” と思うようになった

海外生活の影響もあると思うのですが、僕は日本でも小学生の頃から父親の転勤で大阪・名古屋・東京と3回転校しているんです。だから自分の意思とは関係なしに環境が変わることには慣れていたかなと思います。環境が変わると、結局頼るのは自分なんですよね。だからそこで強くなったんじゃないかな。アメリカに行った時は、せっかく高校生という楽しい時期に周りの子たちが何を言っているかもわからないのがきつくて、毎月のように親に「日本に帰りたい」と言っていましたが、今思うと一番成長できた時期だったとも思います。30歳でアジアに行った時もなんとかなるか、という気持ちでした。今までに40ヶ国ほど行ってきましたが、それぞれの国で価値観が違って、“自分は何者なんだろう?”と自分のアイデンティティを考えるきっかけになりましたし、若い時に世界を知っておくと、こんな生き方もあるんだと理解が広がるように思います。


▼中里社長が仕事をする上で心掛けている3つのこと

  1. 足元と先のことを両方見る

    ビジネスは今の状態を良くすることだけに目を向けられがちですが、短期的なインパクトと長期的にどんな結果をもたらすのか、持続的に良くなるかの両方に目を配るようにしています。

  2. 進歩しているか

    一つひとつの案件がその後プロジェクトとして成長しているか、さらに延長線上であるだけでなくEVOLVE=発展しているかは意識しています。日本でも50年続けていると、失敗例とともにいろんな成功例がありますが、その成功例が何年か経つと危険なんです。そこをいかに磨き上げて新しいステージで進化させるかが大切です。

  3. “欲しい” と思われるブランドであること

    “必要”と思われる必需品であることも大切ですが、それ以上に“欲しい、買いたい”と思われるブランドになりたいと思っています。そのためのアクションは何かを常に意識しています。

 

社長の朝ごはん&モーニングルーティン

中里社長

僕は基本的に朝ごはんと昼ごはんを一緒にしています。朝は起きるとすぐにスクワットをして体の血行を良くして、シャワーを浴びて会社に行きます。午前中は水を飲んだりバナナを食べるくらいかな。少し空腹なくらいのほうが頭が回転して調子がいいんです。そのかわりお昼は少し早めの11:30頃にたくさん食べます。写真は会社近くのイタリアンレストランのランチセットで、サラダは3人前にしてもらっています。



高校生へメッセージ

国内でも海外でもいいので旅はおすすめですね。もしもう一度10代に戻ったとしたら、仕事は何に就くかはわからないけど、旅だけは絶対にまた出ると思います。アジアを旅した時、文化の違いに驚きました。それまで見てきた日本もアメリカも先進国だから、貧富の差はあるけど、食べるものは当たり前にありますよね。でもアジアは違いました。海外に行って受ける刺激もあるし、感じられる自国の良さもあります。旅は旅行と違ってトラブルも起きてしまうので経験値も上がり、思考も柔軟になります。日本って一番心地いいんです。人も良いし安全だしね。それを感じることでも人生が豊かになるように思います。だからぜひ旅に出てみてください。言葉などが不安であれば、アジア圏のタイや台湾など近いところから行ってみるといいかもしれないですね。



取材を終えて

取材は東京にあるコールマンの旗艦店、コールマン 昭島アウトドアヴィレッジ店で。快適なアイテムに囲まれて、取材スタッフもすっかりキャンプ気分。

えみり(高3)
取材の最初に「どんな会社ですか?」と聞いたら「どういう会社だと思う?」と逆に私たちに質問を返してくださって、びっくりしました! 進路で書くことの多くなった自分の長所について悩んでいたので、社長の「他の人とちょっと違うところを見つけてそれを2、3個集めたら長所になる」という言葉を聞いてハッとしました。キャンプはしたことがないので、コールマンの初心者向けのワークショップに参加してみたいと思います!

ちひろ(高3)
取材させていただいたコールマン 昭島アウトドアヴィレッジ店の空間は、商品を見て回るだけでワクワクしました。「得意かどうかより好きかどうか、やりたいかどうか」「好きに勝るものはない」という言葉がとても印象的でした。最初に自己紹介しただけで私たちの名前を覚えてくださっていたことも、さすがだなと思いました。キャンプもしてみたいし、海外にも行ってみたくなりました!

まひる(高3)
「僕の話は参考にならないと思うけど」と添えながら話してくださったお話は、どれもめちゃくちゃ参考にしかなりません! 家に帰って自分の長所を振り返ったら、小学生の頃と今でまったく違ったし、この先も変わるんだと思うと、「長所」と言われてもそれほど難しく考えずに人と違うところを挙げていけばいいんだなと思いました。私もいろんなことにチャレンジしてみたいと思いました!

ゆま(高2)
商社を辞められた時のお話やその後アジアを旅された時のお話を聞くと、とても自由で、少年のような心をずっと持っていらっしゃって、小さい頃から持つ“憧れ”みたいなものを実行する力がある方なのかなと思いました。固定概念にとらわれない自由な考え方は本当に素敵で、私も自分が納得のいくように自由な考え方ができるようになりたくなりました。ありがとうございました!

中里豊Yutaka Nakazato
1996年丸紅株式会社入社。約5年間、資源ビジネスに関わる。2001年に退職後、アジアや欧米諸国を巡る放浪の旅に出る。2003年日本ロレアル株式会社に入社。台湾にてガルニエ マーケティング部長、帰国後、ロレアル パリの事業部長を務め、2011年高級ヘアケアブランド「ケラスターゼ」の事業部長としてブランドの成長に貢献。2015年11月にコールマン ジャパン株式会社の代表取締役社長に就任、以来現職。