社長に会いたい|kakeru 明円卓「今の高校生は大人と同じ情報に触れて急速に大人っぽくなっている」

明円卓

株式会社kakeru 明円卓社長

これまでLIFULL HOME’S「どーしよ?ホームズ」やSNSで話題のお店「JANAI COFFEE」など、数々のヒットを生み出したクリエイティブ・ディレクターの明円さん。
電通から独立してさらに面白いことを企てておられる明円さんの高校時代、頭の中をお聞きしてきました!



≪メルカリ新CMシリーズ「メルとも!」公開≫
明円さんが手がけた新しいCMは、メルカリが大大大好きなメルオさん(堺雅人さん)とおトクが大大大好きなトクコさん(長澤まさみさん)が主役の、かわいい、やさしい世界の物語!

 

まずはどんな会社か教えてください!

困っている人を
アイデアや企画で助ける仕事

困っている人がいたらアイデアや企画で助ける仕事をしています。表現する形はその時々によって違って、テレビCMの時もあれば言葉の時もあるし、イベントの時もスマホの広告の時も、アーティストさんからミュージックビデオやCDジャケットを撮って欲しいという相談がくることもあります。広告業界に就職するとCMのことだけ、言葉のことだけを極めるということが多いのですが、僕は解決手段は多いほどいいと思っているので、会社員(電通)時代は欲張ってすべての打ち合わせに出席していました。

明円卓

 

高校時代はどんな学生でしたか?

バンド活動を続けて
目の前のことを楽しんでいた

友だちと遊ぶのが楽しいとかごはんが美味しいとか、それくらいで何も考えていなかったですね。クラスのみんなが好きだったので文化祭など行事は盛り上がっていたし、バンド活動をしていたので音楽の道で作曲家になりたいとかは少し考えていましたけど、社会で何かを成し遂げたいみたいな思いは、まったくなかったです。それは今もないですね。進路は、ある時自分が表に立って音楽をするのはやめよう、裏方に行きたいと思ったんです。歌が唯一褒めてもらえることだったので、勉強は全然してきていなかったのですが、レコード会社に入るためには大学を卒業している方がいいらしいと聞き、高校3年から受験勉強を始めました。

 

広告業界を目指したきっかけは?

大学時代に電通の企業説明会で
衝撃を受けた

大学に入学してからも音楽業界を目指していたので、アルバイトはミュージックビデオの撮影現場で働いたりしていました。広告業界に進むなんてまったく考えていなかったのですが、大学3年生の冬に就職活動で電通の企業説明会に参加して、“めちゃくちゃ面白そう! この会社に行きたい!”と思ったんです。

広告業界の仕事って音楽の時もあるし、CMの時もあるし、テレビ・雑誌・新聞…いろんなことができるからお得じゃん! って。ただこんなにも行きたい会社が見つかったのに、それまで音楽しかやってこなかったからエントリーシートに書けることが何もなくて、3日後に北海道の父親に連絡して大学を1年間休学させて欲しいとお願いしました。この1年で就職活動用のエピソードを作って、もし受からなかったら稼業の石炭屋さんを継ぐという約束で。

休学した1年間で何をされたんですか?

電通の企業説明会で「デジタルとグローバルに強い人を求めている」と聞いたので、デジタル人材にならなきゃいけないなと思い、デジタル人材っぽいエピソード作りばかりしていました。例えばIT企業の立ち上げをしている人たちに連絡してメンバーに入れてもらったり、自分が作った映像をSNS上で話題にしたり、自分で考えたデジタル広告の動画を企業さんに送ってみたり。実際に焼肉チェーンの「牛角」さんの広告になって、SNSでも話題になりました。

行動力がすごいです。

でも滑って何も話題にならなかったこともめちゃくちゃあります。SNSのアカウントを作るのって無料じゃないですか。だからとにかくたくさん発信して、その中でひとつでも当たればいいと思っていました。そのスタンスは今もそうで、僕は毎月のように新しいアカウントを作っています。

「うるう年にウルウルする🥺」という、4年に一度2月29日にウルウルするツイートを流すだけのフォロワーが27人だけのツイッターアカウントとか、「優しさの鎌足」というただただ人の話を優しく聞くだけのアカウントとか(笑)。世の中に出してみて、滑っている滑っていないを確認しています。これは皆さんも今日からできることだと思うので、やってみたらいいと思います。

明円卓

 

CMを作る時に大切にしていることを教えてください!

誰も否定できない
好きなものを語るキャラクター

電通の企業説明会で「デジタルとグローバルに強い人を求めている」と聞いたので、デジタル人材っぽいエピソード作りばかりしていました。例えばIT企業の立ち上げをしている人たちに連絡してメンバーに入れてもらったり、自分が作った映像をSNS上で話題にしたり、自分で考えたデジタル広告の動画を企業さんに送ってみたり。実際に焼肉チェーンの「牛角」さんの広告になって、SNSでも話題になりました。でも滑って何も話題にならなかったこともめちゃくちゃあります。SNSのアカウントを作るのは無料だから、とにかくたくさん発信して、その中でひとつでも当たればいいと思っていました。僕は今でも毎月のように新しいアカウントを作って、実際に世の中に出してみて、滑っている滑っていないを確認しています。

 

ブームを作るために大切にしていることはありますか?

SNSの広がりが不可欠
「いいね」と共感してもらうことが大切

今の世の中のブームにSNSは欠かせないので、どれだけ「共感」を作るかを大事にしています。そのためには嘘がなく、上から目線にならないことも大切です。僕はチームメンバーに「自分だったらいいねを押す?」と聞きます。一視聴者の目線に立って考える。だから企画者はできるだけ普通の感覚でいる方がいいんです。「どうしたらそんな天才的なアイデアを思いつくんですか?」とか聞かれることがありますが、それはまったく逆で、僕はめちゃくちゃ普通。普通の感覚で見た時に面白いと思えるかどうかという感覚を研ぎ澄ませていく方が大事だと思っています。

普段からネタ探しはされているんですか?

それはめちゃくちゃしています。学生インターンにも「とにかく作る人になろう」と言うんですが、作る人になるとその日から世界が変わります。街を歩いていると「なんで」「なんで」が生まれます。「なんでこの広告はこの場所(この駅)に掲出されているんだろう」「なんでこの言葉を使うんだろう」「なんでこのタレントさんを起用したんだろう」。その先は「もっとこうしたらいいのに」を考えます。

これは広告だけに限らず、「なんでこのレストランはこんなに居心地がいいんだろう」「なんであの店員さんの態度は気持ちいいんだろう」「なんでマリトッツォは人気なんだろう」「絵面がインパクトあるからかな」とか。一番始めやすいのは、人気の理由を探ること。世の中を仮説を持って眺めていくと、良いものが生まれるんじゃないかなと思います。僕はそうした“素振り”を毎日続けています。

なるほど! そうやって鍛えていくんですね。

先日大阪に行った時に、ヨタヨタのおじいちゃんおばあちゃんがやっているラーメン屋さんに入ったんです。誰が先に注文をしたかとか覚えてないから、順番を抜かされたりするわけです。僕はそれが特別な体験をしているようで嬉しかったんですよね。その理由を考えた時に、完璧なサービスを受けることが当たり前の今の日本において、不完全なサービスを受けた時に特別だと思えるんだと思ったんです。こんな感じで自分が嬉しいと感じたり、嫌だなと感じた理由の解像度を高めて言語化することを繰り返しています。

 

明円さんが今の高校生世代に感じることは?

大人と同じ情報に触れて
急速に大人っぽくなっている

SNSでツイートも勝手に回ってきていろんな大人の会話を見ることができるし、いろんな情報を得ていますよね。見ている情報は大人と同じです。だから子ども扱いしないということは自分の中で決めています。僕よりも学生の皆さんの方が優れていることもたくさんあるし、年齢が上と言ってもただ長く生きているだけなので。僕は学生インターンの意見もよく聞くし、誰に対してもフラットな感覚で、敬意を持って一緒に仕事をしています。


▼明円社長が心掛けている3つのこと

  1. 作ってみる

    まずは手を動かして考えます。アイデアを思いついたらすぐ形にすることを心掛けていて、先日催した「やだなー展」も1ヶ月ほど前に思いついて実現しました。お店のアイデアを思いついた時には2週間後に物件を借りていました。口で言うだけでなく、実際に物を作る側になることが大事だと思っています。

  2. 200%で返す

    人は期待を超えた時に感激するじゃないですか。だから相談してくれた人に頼んで良かったと思ってもらえるように200%で返すこと、感動する働き方が大事かなと思っています。

  3. 友だちになる

    僕の働き方のほとんどは “友だちと仕事をする” が基本です。制作のお仕事をする上で一番やってはいけないことは、遠慮することなんです。「これよくないな」と思っていたのに言わないまま世に出てしまうことは一番失礼なので、必ず自分の疑問がなくなるまで話すし、「それは違うと思います」など思ったことは必ず伝えます。それで関係が悪くなったことは一度もないし、依頼してくれる人も巻き込んで本音で語り合える関係性を作っています。

 

明円社長の朝ごはん&モーニングルーティン


明円 僕は起きている時間はすべて仕事をしているので、モーニングルーティンは特にありません。朝起きて支度したらオフィスに来て働いて、夜遅くに帰って寝るだけ。毎日新しい仕事があるし、作りたいものが作れるし、ほぼ遊びのように仕事しています。朝ごはんはラーメンとか食べちゃいますね。エネルギーがつくものを朝・昼・昼・晩・晩! というくらいめちゃくちゃ食べます。企画を考える仕事なので体も仕事道具。寝る時間も体調のケアも大事。だから生牡蠣は年末年始以外は食べないし、失恋しても仕事を止めることはありません! 僕に期待して仕事を頼んでくれているお客さんを裏切るようなことはしたくないから。真面目でしょ?(笑)

はい、めっちゃ真面目です。

明円 もし悩みがあってストレスが溜まったら、必ずその日のうちに解消するようにしています。僕の場合は好きなアイスやカップラーメンを食べたら嫌なことはもうそこで終わりと決めています。そういう意味ではメンタル面でのルーティンはあるかもしれないですね。

ちなみに何のアイスなんですか?

明円社長

恥ずかしいんですけど…ピノですね(笑)



高校生へメッセージ

一刻も早く何かを作って人に見てもらった方がいいと思います。作る人、企画する人になってください。みんなは自分の人生を企画したことはありますか? 僕は年末年始に必ず今年どう生きるかを企画します。何月に何をする、とか。そして3年後、10年後のことも考えます。「高校生活のうちにコンビニにあるチョコレート菓子を全部食べる」とか「納豆ごはんの一番美味しい食べ方を100個研究する」といったことも企画です。期限も決めるんです。急に人生が楽しくなります。SNSを置いて、紙とペンで自分のことを考える時間はとても大切です。実際はその通りにはいかないこともあるけど、それでもいいんです。


明円卓Suguru Myoen
‘89年、北海道出身。立教大学社会学部を卒業後、’14年に株式会社電通へ入社。auのCM「意識高すぎ!高杉くん」の発案者でもあり、バズる広告の仕掛け人として注目を集める。’20年に電通を退社後、独立し、株式会社チョコレイトに参画。同年、株式会社kakeruを創業。表向きはコーヒースタンド実はバーの顔を持つユニークな「JANAI COFFEE」の代表も務める。